221人が本棚に入れています
本棚に追加
◇
「ケイ、いったん一階に戻らなくていいの?」
「お前はついてこなくていいって」
ケイ自身、まだ心のどこかで疑っていた。
一体どうやったのかはわからないが地下からかかってきた内線はトリックで、三人が共謀して自分をはめようとしている可能性。しかし、それにしてはあまりにも手が込みすぎている。震えながらも後ろからついてきている嵯峨と話しながら女子更衣室を目指す。
早い話、そこを確認して嵯峨の話が本当かを確かめれば済むことだ。
訳の分からない話に付き合っていないでさっさと何もない更衣室を確認して嵯峨を笑い飛ばして帰ろう。ケイが出した結論はそれだった。
女子更衣室のプレートが張られたドアの前でケイが嵯峨に訊く。
「さっき言ってた女子更衣室ってここか?」
「う、うん」
背後で震えている嵯峨に確認してドアノブに手をかける。部屋の中の電気は消えているようだった。
ゆっくりとドアノブにかけた手に力を込めながら、その瞬間、ふと気づいてケイが止まる。
背中で嵯峨に訊いた。
「なぁ嵯峨…さっきお前、綾部さんを担いで夢中でここから逃げたって言ってたよな…?」
嵯峨は何も言わなかった。ケイの硬い声が廊下に響く
「なんでこのドア、閉まってるんだ?」
瞬間、嵯峨に思いっきり突き飛ばされる形で乱暴に部屋の中に倒れこむ。
両手をついて体が倒れこむのを阻止して慌てて嵯峨を見上げて抗議しようとしたその時だった。
最初のコメントを投稿しよう!