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◇
「アルテミス…ッ!!」
バンっとドアを開けて入ってきた青年に、腕を洗ってお気に入りの香水で血の匂いを取っていたアルテミスが嬉しそうに返す。
「あら、ピラムちゃん。もぅ、遅かったじゃないの。あなたがレッピーより先に来るのが普通じゃない?」
グッと握りしめていた拳から血が滲んでついに滴となって落ちる。
ピラムが大人しい声で言った。
「…ごめんなさい。素直に謝るよ。俺たちの負けだ」
余裕のある温かい声でアルテミスが優しく窘めるように返す。
「それで? お兄さんたちを返してほしいのよね?」
「……なんでもする」
感情を一切声にのせずに素直な声で頭を下げるピラムに、何度も頷きながらアルテミスは言った。
「お姉さん、素直な子は好きよん。ご褒美にどちらか一人だけ私がアポロンに頼んで助けてあげる」
悪魔よりも、よほど悪魔の形相で、絶世の美女は囁いた。
「異母兄弟と異父兄弟、どっちを助ける? ピラム」
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