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◇
「なぁ…アスクレピオス。俺は…さ」
アスクレピオスの悲痛な叫び声にかき消される中、アポロンは一人で呟き続けた。
「こうしてお前の悲鳴を聞いてると心が張り裂けそうになる。…まるで愛した女に裏切られて殺した後みたいに気持ちが沈む…。他の奴をいくら拷問したってこんな気持ちになったことなんか一度もねぇってのに…」
カラスに内臓を食い散らかされながら、普通ならとっくに死んでいるような状態で、それでも死ねないまま悲鳴を上げているアスクレピオスを眺めてアポロンは静かに泣いていた。
「すげぇだろ? お前が苦しんでることがこんなにも辛い」
立ち上がって、カラスたちを一度自分の方に回収してから、男は言った。
「これって愛だと思わねぇか? 俺がお前を心から愛してるって証拠だ」
肺に穴でも開いたのか空気が抜けるような嫌な呼吸音を繰り返しながら、必死にアスクレピオスが掠れる声を出す。
「…ふ……ざけ…」
ろくに話せないまま咳込んで血を吐いている息子を無視したまま、アルテミスからの伝令を受け取ってアポロンは呟いた。
「チッ…。今度はピラムかよ。ったく親不孝な息子が多くて困るぜ。ピラムはどーすっかなぁ…謝るまで火ぃつけた窯ん中にでも放り込んどくか」
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