第十五話 -愛情-

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◇ 「……おい。親子の団欒に水差してんじゃねぇ」  目の前の男が何か言っている。男の腕の中でぐったりとしたまま指一本動かさない…自分の大切な兄弟。 「……何…したかわかってんのか…?」 「は?」  気絶しているアスクレピオスの身体は無残という言葉さえ生ぬるい。 「自分が何したかわかってんのかって聞いてんだッ!!!」  建物が揺らぐのではないかと思うほど大声で怒鳴るヘラクレスにアポロンが鼻で笑った。 「躾だよ。見りゃわかんだろ?」   「ただの虐待だろうがッ!!!」 「テメェにゃ言われたくねぇよッ、この妻子殺しがッ!」 「…………ッ」  言葉に詰まってしまったヘラクレスにアポロンは勝ち誇ったように言った。 「他人が出る幕じゃねぇんだよ。すっこんでろ」 「誰が他人だ…ッ! そいつは…俺の……ッ」  血の繋がった本当の兄弟ではなかったけれど。 「黙れ。俺は父親だぜ?」
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