第十五話 -愛情-

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 その言葉に何もかもがはじけ飛んだ。 「貴様のどこが親だッ!! これが親のすることかッ!!!」  背中の棍棒を抜いてアポロンめがけて真っすぐ突っ込む。  アスクレピオスを抱いたまま軽々と飛んでかわして部屋の隅に彼を降ろしてからアポロンが怒鳴り返す。 「だから……テメェの子供を殺した奴に言われたくねぇっつってんだろうがッ!!」  距離をとったままアポロンが空間から取り出した自分の弓をひく。  瞬時に大量に放たれる銀の矢はすべて必中だ。ピラムの矢と同じで予言の神であり弓術の神でもあるアポロンの矢は絶対にかわせない。  しかしその銀製の矢をすべて正面から棍棒で力任せに砕き落として殴りかかりながらヘラクレスは叫んだ。 「父親なら何故子供を愛してやらない…ッ!!!!」 「俺なりに愛してやってるつもりだぜ? ああ…。テメェにはわかんねぇか」  アポロンに寸前でかわされて勢いを落としきれずに壁に突っ込んで大理石の建物に大穴を開ける。 「……ッ」  ヘラクレスがすぐさま反転して飛んできた矢を片っ端から叩き落しながら怒鳴った。 「今すぐレピオスに泣いて詫びろッ!!!!」 「やーなこった」  医学の神でもあるアポロンの矢は必中であると同時に疫病の矢でもある。掠っただけで瞬時に発症して戦闘どころではなくなる。ある意味で最強の毒矢だ。その上たとえ当たらなくても被弾箇所の周囲数キロにウイルスを撒き散らすため物理世界であれば広範囲に対して殺傷能力を持つ。神界で空気感染はほぼないが、さすがに直接当たれば感染は免れない。
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