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「弟は親父と母さんの間にできた本当の子で人間。俺は…親父の留守中にゼウスが母さんを騙して強姦してできた半神だった」
「…………」
色々苦悩した両親も、初めは生まれた双子を平等に育てようと努力した。が、結局家にヘラクレスの居場所はなかった。いっそ本当にこの家の子として人間に生まれていたらどんなに良かったか。
ゼウスはヘラクレスを受け入れてくれたが、母を犯したゼウスを心から父だと思うことはできなかった。むしろ本当の子でもない自分を受け入れようとしてくれた人間の父親の方が血は繋がっていなくてもよほど父親だと思えた。その上ゼウスは息子のヘラクレスを受け入れても、ゼウスの正妻であるヘラがゼウスの浮気によって生まれたヘラクレスを受け入れるはずもなく、赤ん坊のころから何度も暗殺されかけた。
「…つくづく俺は自分が生まれてきたことを呪った。…ま、神界あるあるだがな」
「その言葉流行ってんのか? 他の奴らも言ってたぞ」
その言葉にようやく少しだけ笑って男は言った。
「みんな似たようなもんだからな。…半神は」
「半神…」
この世界に来て、何度か耳にした言葉だった。神と人の間に生まれたハーフを指している言葉だと聞いたが…。
思わずその言葉を反芻した後、ケイが訊く。
「でも、今はみんなもう神なんだろ?」
すると、ヘラクレスは恐ろしいほど真剣な顔で訊き返した。
「…………お前もあいつらとこの世界をずっと見てきたならもうわかってるんだろ?」
「え…?」
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