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◇
結局、その日は夕方まで一日嵯峨と二人で色々話す羽目になった。
嵯峨はケイに比べて怪我は軽かったが、今まで寝ていたために身体が本人も驚くほど全く言うことを聞かないらしく、リハビリが必要なためしばらく入院が続くらしい。
昨日アポロンのところから戻ってきた後、覚悟を決めたケイがアイムに煮るなり焼くなり好きにしろと言いに行ったところ、自分は後でいいからお友達とのお別れをしてくるといいというようなことを言っていたが。
無論、今目の前でしゃべっている嵯峨に何を訊いても全く無意味だろう。
夕方ごろ、ちょうど嵯峨が車椅子で病室から出ているときにナナミがひょっこり顔を出した。
「あ、起きてる~」
そのあまりにのんびりしたいつもの口調に拍子抜けしたようにケイが笑う。
「仕方ないだろ。入院中暇なんだから」
「それにしたってケイはちょっと寝すぎ。今日だって東寺くんも誘ったのに、どうせあいつは今日も寝てるよって言ってさっさと帰っちゃったし」
いつもより少し不機嫌なナナミに苦笑して返す。
「まぁ、ホントにいつも寝てばっかだから仕方ないって。…ナナミは、相変わらず元気そうだな」
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