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突然ガクッとハルナの右肩が下がり、彼女の全体重が嵯峨にかかった。どうやら嵐山が転んだらしい。こんな何もないところでこけるなんて何をやってるんだと嵯峨が笑いながら床を見た時だった。
「…………下半身が…」
「え?」
ケイの心臓が大きく鼓動を打つ。嵯峨の目はとても演技ではなかった。
震える声で彼ははっきりと言った。
「彼の下半身がなかったんだ」
「…………なん…で?」
他になんと訊けば良かったのか。少なくともそんな馬鹿なことがあるはずがないと笑い飛ばせるだけの余裕はケイにもなかった。
「…わからない。とにかくそこからは…めちゃくちゃだった」
慌てふためいて意味不明な悲鳴を上げながら途中まではハルナを引きずるようにして一緒に逃げた。しかし、そのハルナも廊下で突然ものすごい力で嵯峨を突き飛ばし、オフィスのドアを開けて奥の方へ逃げて行ってしまった。逃げて助けを呼ぶべきか、ハルナを探すべきか。迷った末に嵯峨は一応オフィスを探してみることにしたらしい。
「オフィスなら…他に出口もないし、隠れられそうな場所もないから絶対にすぐに見つかるはずだと思って…」
しかし、どれだけ探しても彼女は見つからなかった。諦めて帰ろうとしたが、入ってきたオフィスのドアが開かなくなっていた。
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