2.T字路の家

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 側まで行くと、あたしの姿に気づいた四ノ宮くんが、 「あ、おはよう。神谷さん」 あたしを見上げて挨拶をしてくれる。その笑顔が、やっぱり弱々しい。 「おはよう。四ノ宮くん。……ねえ、今日もしんどい?」  挨拶を返した後、ひそひそと尋ねると、四ノ宮くんは、 「すごい。神谷さんはお見通しやね。せっかく神谷さんが昨日おまじないをしてくれたのに、風邪がぶりかえしたみたい」 と、あたしと同じように小さな声で答えた。 「無理して学校に来たの?」  体調が悪いのなら、欠席をすればよかったのにと思って尋ねると、 「お母さんに心配かけたくないし」 と、親孝行な答えが返ってくる。 「あたし、もう一回おまじないしてあげる」  あたしは四ノ宮くんに耳打ちすると、四ノ宮くんの体に手をかざして、 「『かけまくもかしこき いざなぎのおほかみ つくしのひむかのたちばなのをどのあはぎはらに みそぎはらへたまひしときに なりませるはらへどのおほかみたち もろもろのまがごとつみけがれ あらむをば はらへたまひきよめたまへと まをすことをきこしめせと かしこみかしこみもまをす』」 と小声で唱えた。祝詞が終わると、黒いモヤモヤがふっと掻き消える。 「あ、体が楽になった。本当にすごいね、神谷さんのおまじない」  四ノ宮くんは感心したように言うと、キラキラする笑顔をあたしに向けた。 (ま、まぶしい……!)  好きな人が、あたしにステキな笑顔を見せてくれたことが嬉しくて、心臓がドキドキ音を立てる。
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