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「実は、春休みの間から、ちょっと頑張ってたんだよ」
「頑張ってたって?」
カナちゃんが興味を示したので、
「お風呂で顔を洗う時は、ママの洗顔料を使うようになったし、親戚のお姉ちゃんに、ファッション雑誌を見せてもらったりしてた」
と胸を張る。
春休みの間、お肌がきれいになる様に、お風呂に置いてあるママの洗顔料をこっそり借りたり、杏奈ちゃんにお願いして、ファッション雑誌を借りたりしていた。洗顔料はバラの匂いで、洗うときれいになったような気がしたし、雑誌の内容は大人のお姉さん向けだったけど、おしゃれなお洋服を着たモデルさんの写真を見ていると心がウキウキとした。
「そうなんや~。私も小学校に入ってから洗顔料使ってるし、お姉ちゃんの雑誌も読んでるよ。お休みの日は、お姉ちゃんに、雑誌のモデルさんみたいに髪を巻いてもらったりしてるんだ~!」
ちょっと自慢げに言ったのに、カナちゃんはあたしより上手だった。
(カナちゃん、じょしりょく高い……)
負けた、と思って肩を落としていると、
「おはよう」
教室に四ノ宮くんが入って来た。思わずそちらに顔を向けて、あたしは、
(……!?)
びっくりして目を見開いた。
四ノ宮くんの体に、黒いモヤモヤがまとわりついている。
(穢れ!?昨日、祓ったのに!……四ノ宮くん、なんだか元気がないみたい。きっと今日も体調悪いんだ)
自分の席に向かい、腰を下ろした四ノ宮くんが気になり、あたしは、
「ちょっとごめんね、カナちゃん」
カナちゃんに謝ると、席を立って、四ノ宮くんのところへ向かった。
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