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「結殿は相変わらず声が大きいな」
「ははは、お嬢が元気なのは良き」
狛鳶さんの中から、やんちゃそうな外見の着流し姿のお兄さんと、狛猿さんの中から、坊主頭で作務衣を着たひょうきんな顔のお兄さんが現れた。
「狛鳶さん、狛猿さん、こんにちは!」
「結殿が達者で何より」
「お嬢はいつも明るいですなぁ」
元気いっぱい挨拶をすると、狛鳶さんと狛猿さんが感心したように褒めてくれる。
3人で話していたら、ぱたぱたと背後から足音が近づいて来て、
「結さん!」
「結さん、遊びに来てくれたの?」
小さな男の子と、女の子があたしの背中に飛びついて来た。ふたりとも、見た目は小学校低学年ぐらいかな。
「狛ねずみの阿形くん、吽形ちゃん!」
男の子と女の子はふたりとも小さい目をしているけど、かしこそうな顔をしていて、上品なお洋服を着ている。
「愛莉さんはお元気ですか」
「愛莉さんも、遊びに来てくれたらいいのにー」
「ママなら元気だよ。今度ママも連れて来るね」
わいわいと狛ねずみたちと喋っていると、
「さても、そなたが来るとうるさくて、おちおち眠ってもいられないわね」
今度は、真っ白の着物に赤い帯を巻き、長い黒髪を頭の上でハーフアップにした若い女の人が姿を現した。その隣には、同じく白い着物を着た、切れ長の瞳の男の人が寄り添っている。ふたりとも、とっても美人さん。
「狛狐さんたち!もしかして寝てたの?起こしてごめんね」
「かまうまいよ。こんなことを言っているが、天音(あまね)はお前のことを気に入っているのだ。あの人の子は次はいつ遊びに来るのか、といつもぶつぶつ言っているのだよ」
「余計なことは言わないでください、空耶(くうや)」
ほんのり赤くなった天音さんを見て、空耶さんは面白そうな表情で笑っている。
「そうなんだ、待っててくれたんだぁ!嬉しいな!」
あたしが天音さんを見上げてそう言うと、天音さんは照れ隠しのように、ぷいっと横を向いてしまった。
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