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4.初恋の行方
「……というわけで、四ノ宮くんのおうちの禍は祓えたんだよ!」
大豊神社の境内。大国社の前の階段に腰掛けながら、あたしは神使のみんなに、T字路の家の顛末を話して聞かせていた。
「ほほう。さすがは誉殿」
「風鈴を使うとは、考えましたね。音と霊符で2重に結界を張ったわけですね」
狛鳶さんが顎を撫でながら目を細め、阿形君も感心したように頷いている。
「これでもう、きっと大丈夫だよね?」
狛猿さんの顔を見上げて問いかけたら、
「そうさな、霊符がある限り大丈夫だろうな。それにもしまた何かあれば、この先もお嬢が助けてやれば良いのだよ」
狛猿さんはそう言うと、あたしの肩に手を置いた。
「それにしても、狛猿。今回あなたはちっとも役に立ちませんでしたね。『神猿(まさる)』の名が泣きますよ」
天音さんが着物の袖で口元を覆い、からかうように言った。
「そう言うてやるな、天音。そもそも、立地に原因があったのだ。『神猿』の力も及ぶまいよ」
空耶さんが狛猿さんをフォローしたけれど、狛猿さんは空耶さんの言葉に苦笑いをした。
「この度、ワテの力が及ばなかったことは、本当に面目ない。しかし今のあの家なら、命様の御力をお送りしても、しっかりご加護が頂けるはず。後でもう一度、命様の御力を届けて来よう」
「本当!?」
パッと狛猿さんの顔を見上げると、狛猿さんは、笑って頷いてくれた。
「それで、結さん。今日はこれから四ノ宮くんと動物園に行くのですよね?」
狛ねずみの阿形君がにこにこと問いかけて来たので、あたしは阿形君に視線を移すと、「うん」と頷いた。
「あとで『Cafe Path』の前で待ち合わせをしてるの!颯手くんがおやつも作ってくれるって言ってた!」
「おやつ!いいなぁ~」
吽形ちゃんが両手を組んであたしを見上げ、うらやましそうな顔をしたので、
「今度みんなにも作ってもらえるか、聞いてみるね」
と言うと、
「ほんと?やったー!」
吽形ちゃんはぴょんぴょんと飛び跳ねて喜んだ。
「だから、あたし、そろそろ行くね」
あたしは階段から立ち上がると、傍らに置いてあったリュックを背中に担ぎ、神使たちの顔を見回した。
「じゃあね、みんな。またね~!ばいば~い!」
みんなにぶんぶんと手を振り、境内を出る。
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