2.T字路の家

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2.T字路の家

 始業式の翌日。春休み明けなので、少しかったるい気持ちで登校をする。  今日から、授業が始まる。  教室に入り、自分の席に座ると、隣の席になった仲良しのカナちゃんが、 「おはよ~、結ちゃん」 と挨拶をしてくれた。 「おはよ~」 「今日から授業なんて嫌やなぁ。しかも算数からなんて、サイアク」  算数が大の苦手のカナちゃんが頬を膨らませる。 「そうだね」  あたしは苦笑すると、ランドセルを下ろして机の横に掛けた。 「そういえば、結ちゃんは春休みに何をしてたん?」 「ええと、大豊神社に行って……」 (神使たちと遊んだり) 「パパのいとこのお兄さんがやってるカフェに遊びに行ったりしてた。カナちゃんは何をしていたの?」  一部は秘密にして、カナちゃんの質問に答え、今度は逆に問い返すと、カナちゃんは「よくぞ聞いてくれました」とばかりに身を乗り出し、 「私は、東京のテーマパークに連れて行って貰ってん!」 と自慢げに言った。  東京のテーマパークと言うと、可愛いキャラクターがいっぱいいる夢の国! 「へえ~!いいな~!」 「お土産、買って来たの。はい!」  カナちゃんはもう用意してくれていたのか、机の中から紙袋を取り出すと、あたしに差し出した。 「わあ!ありがとう!」  いそいそと袋を開けると、中に入っていたのは、テーマパークのキャラクターが描かれた小さな丸い缶だった。 「これ、なあに?」  缶をくるくると回しながら尋ねてみると、 「練香水だよ」 カナちゃんは得意げに答えた。 「ねりこうすい?」 「クリーム状になった香水。手首とかに付けると、いい匂いがするねん」 「そうなんだ!ステキ!」  カナちゃんには高校生のお姉ちゃんがいて、その影響で化粧品に詳しい。学校ではしないけど、放課後、時々、色付きリップを塗っていたりする。 (手首に付ける香水なんて、大人っぽい!)  早速、缶のフタを開けてみる。中には薄い黄色のクリームが入っていて、心が落ち着くようなお花のいい香りがした。 (これをつけたら、杏奈ちゃんみたいになれるかな?) 「あたしも、カナちゃんみたいに、化粧品とか欲しいなぁ……」 「結ちゃんが化粧品に興味を持つ日が来るとは思わへんかった」  練香水を買って来てくれたのに、カナちゃんがそんなことを言う。 「ひどい」  唇を尖らせると、 「だって、結ちゃん、いつも校庭で男の子とサッカーしてるやん。そういうの興味ないと思ってた」 カナちゃんが笑った。 「確かに、サッカーしてたけど……。2年生の時の話だよ。3年生になったから、あたし、変わるの。大人っぽくなって、きれいになるの!」 (だって、四ノ宮くんに、あたしのこと見てもらいたいし)  あらためて決心をする。
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