当たりが出るまで引いていい

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「冨樫が来たぞー」  船が出るぞー、くらいの感じで駄菓子屋の入り口付近にいた誰かが叫んだ。  誰かがって、まあ、あやかしだ。  さっきから私たちがやっていることを物珍しそうにみんな眺めていたのだ。  小柄なぬっぺっぽうがずっとボウルの中を覗いていて怖い、と壱花が思ったとき、倫太郎が言った。 「貸せ。  やっぱり俺がやるっ」  倫太郎は、あやかしに囲まれ、カウンターに背を向けるように立つ壱花がのたくた泡立てていたボウルを取る。  氷水の入ったボウルに重ねたもうひとつのボウルで生クリームを泡立てはじめた。  あっという間に、八分立てになる。 「うう。  ありがとうございます。  しかし、できる人は何故、分野に関わらず、なんでもすぐできてしまうんでしょうね」  極まれにケーキなど作るときもあるのだが。  絞り出すだけのホイップクリームを使っているので、生クリームを泡立てたことはあまりなかった。
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