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「まあ、なんだかんだでありがとう」
そう冨樫に言われた壱花は、
なんでみんな私になにか言うときは、枕詞のようになんだかんだでって言うんだろうな、と思いながら、
「いえいえ、余計なことをいたしまして」
と謝った。
冨樫は、
「まあ、余計なことだったな」
と毒を吐きながらも、
「だが、すっきりした」
と言ってくれた。
「今の父親は文句のない父親だが、やはり、何処かで消えた本当の父のことが引っかかっていたんだろうな。
今はちょっとすっきりした気分だ。
生きているのか死んでいるのか。
これから先、会うことがあるのかどうかもわからないが」
そう言いながら、冨樫は今の家族の写真を見せてくれた。
そこに写る富樫の母は美しく、
「冨樫さんお父さん似だと思ってましたけど。
お母さんにも似てらっしゃいますね」
と笑うと、冨樫は渋い顔をし、
「だが、なんというか。
いつも軍隊の上官か? というような物言いで何事にも厳しい人なんだ」
顔以外、何処がいいのかよくわからない、と言う。
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