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サラリーマンたちは、あやかしは見えない人がほとんどなのだが。
あやかしではないせいか、ライオンは見えるようだった。
彼は一瞬、ビビったものの、理性で、これは置物だ、と判断したらしく、入ってこようとしたのだが。
運悪く、そのタイミングでライオンが欠伸をしてしまった。
慣れた自分たちにとっては、かなりまったりとした光景だったのだが。
いきなり間近で、ガバッとライオンに口を開かれたサラリーマンは逃げ帰っていた。
「ああ、癒されに此処に来られたはずなのに。
かえってストレスかけてしまいましたよ~。
高尾さん、あのライオンさん、山に連れ帰ってくださいませんか?」
そう壱花が言うと、店の隅のストーブで倫太郎がすっかり飽きた文字焼きを子狸たちと焼きながら高尾が笑う。
「いやいや、葉介のお父さんが潜んでるかもしれない山にライオン放ってどうすんの」
まあ、何処のどんな空間にある山か知らないですが。
他の人間も現れるかもしれませんしね、と壱花が思ったとき、倫太郎がまだダンボールを漁りながら言ってきた。
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