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名無 様作 鈴香牧
牧のイラストを、名無 様に描いて頂きました。https://estar.jp/novels/25496701/viewer?page=65
眼鏡ver.https://estar.jp/novels/25496701/viewer?page=65
名無 様 https://estar.jp/users/159246105
シーントーク:(出演:牧・未汝・葉月・みなと・教師・その他)
今日は授業参観だ。
教室で友達とおしゃべりしていると、他の保護者に混じってやってくる父の姿を見つけた。
未汝「お父さん、どうしたの? その眼鏡」
牧「良く分からないが、出がけに華菜に渡された」
未汝「お母さんが?」
牧「何か、正体がバレたら大変!! イメチェンよ!! と言っていたが・・・」
牧は未来の国王陛下だ。今から100年後の未来の、だが。
未汝「正体って・・・・・・」
バレようがない、未来の話なんて。と未汝は思いながら、まじまじと父の顔を見る。
端正な顔つきをしている父だ。若い頃はモテたんだろうなと未汝は思う。そんな父は普段眼鏡などかけないので、ちょっと新鮮だ。
牧「それで? 今日は何の授業なんだ?」
未汝「社会だよ。政治経済」
牧「政治経済か。興味ないからって寝るんじゃないぞ」
未汝「授業参観に? まさか」
ケタケタと笑っていると、社会科担当の先生が入ってきた。未汝は慌てて席に戻る。
授業は最初に国の政治の仕組みをおさらいし、後は「国として必要なものとは?」を親を交えてグループで考えさせ、発表させる形式だ。
未汝はいつも通り、友人の葉月と彼氏になったみなとと共に、グループを組んだ。
未汝「国として必要なものって、やっぱり法律はいるよね? あとお金?」
みなと「防衛も必要だろ? 攻められたら困るし」
葉月「社会保障もいるよ? 健康保険とか、年金とか、破綻寸前だけど・・・」
子供達の話し合いに、大人達は微笑んで耳を傾ける。
意外とそういう知識は持っているらしい。子供だから何も知らないと思っていると、思わぬ情報を得ているようだ。
葉月「お父さんはどう思う?」
葉月が傍に立つ父に問うと、葉月父は「外交とかもいるなぁ」と柔らかく曖昧に返答する。みなと母はそれを聞いて、「そうですね、世界と協調していかなくては」と微笑みながら同意した。
未汝「お父さんはどう思うの?」
未汝が頭を上向けて後ろで黙って立っている父に問うと、そうだな。と口端を吊り上げてニヤリと笑った。その目は、面白いおもちゃを見つけた大型の猫のような目をしている。
牧「もっと根本的なものが必要だろうな。国として成り立つために必要なもの、あるだろう?」
未汝「成り立つために? 」
牧「そう、成り立つために。憲法の第一条一項の最初に書かれた2文字で出来た単語だ」
未汝「分からないんだけど」
他の面々も、何だろうと悩み込んでしまっている。
みなと「あ。領土、ですか?」
牧「それも必要だが、違うな」
葉月「王族?」
牧「統治するには必要だろう」
未汝は、「統治するには?」とその言葉に引っかかりを覚える。
未汝「あ、そうか。国民だ。人がいないと国って成り立たない」
牧「正解だ。だから国民を守るために、政府は動く。国民の居場所確保のために、領土、領海、領空を持って安全確保をし、外交でもって国民の生命や尊厳が踏みにじられないようにする。ここが確固たるものでないと、いくら国内を統治しても、意味をなさない」
葉月「なるほどね~」
牧「そしてまた、国内が統治されていなくても国として成立しない。トップが乱立したら一つの国とは言えないだろう。そして国民を国民だと認めるものがなくてもダメだ。法律でもって国民が誰なのかを明言し、その国民の生命と尊厳を守ると公言して、差別を禁じて平等を謳い、その衣食住を保証し、治安を維持する。防衛は国土を、ひいては国民の生命と生活を脅かすものを排除するために、社会保障は国民の人としての生活を保障するための一つのシステムに過ぎないんだ」
さらさらと淀みなく、その口から国を統治するための基礎が語られる。まるで台本でもあるかのように。
未汝は、向けられた痛い程の視線に気が付いた。
いつの間にやら教室内がしんっと静まり返って、教師までもが父に注目している。
その父はといえば、人の視線を集めることに慣れてしまっているので、室内の異変には気が付かない。
牧「ただ、システムがないというのもマズイ。法律だけあって、それを生かす手立てがなくては、それは単なる文字の羅列にすぎないからだ」
未汝「お、お父さん」
上着の裾を、ちょいちょいと引っ張ると、牧が「どうした?」と怪訝な顔をする。
教師「そこまでさらさらと・・・。それも理論立っていて分かりやすく・・・素晴らしいですね。鈴香さんのお父様。ご職業、そういった方面でいらっしゃいますか?」
未汝の顔が、引き攣った。
まさか、未来の国王陛下です。統治者の立場で、それを考える本業の人ですとは言えない。
牧「いえ、仕事は単なる会社員ですが、経営に携わるにあたって、色々読み漁ったり指南を受けたものですから。これは指南を受けた時に教えられた受け売りです。国も会社も同じと考え経営した方が良い、と」
しれっと、嘘八百を並べ立てた。
さすが国王陛下。ポーカーフェイスなどお手の物。このくらいの追及、国会や報道陣からの追及に比べたら甘い甘いと、余裕すら見える。
未汝は、口をぱかっと開けた。実に呆けた顔である。
ちなみに、牧の本職を知っている葉月とみなとは、苦笑いだ。
牧「なんだ未汝、年頃の娘がそんな面白い顔をしていると、嫁の貰い手がなくなるぞ」
未汝「巨大なお世話!!」
そう未汝が大声で言い返すと、教室内は笑いに包まれる。先程までの静まり返った雰囲気を、一瞬で元に戻してしまう話そらし術の手腕は見事だ。
キーンコーンとチャイムが鳴った。発表する時間がなくなってしまったので、それは次回の授業に持ち越しにされる。
ハラハラドキドキの授業参観は、こうして無事に終わったのだった。
高杜観覧感想文:
我が家のヒエラルキー頂点のお方が、とうとう君臨!!
初ビジュアル化ですよっっ!!!(最初のビジュアルは次ページのパパりんでしたが、受験生の親ならもう少し若いんじゃ?ということで描き直して下さったのです)
うわぁぁぁぁぁぁぁっイケメン!!そしてその目にお茶目さまで兼ね備え、牧の特長を実に良く捉えて下さってます。
さすがは魔術師様のイラスト。はは~っと正座で拝みました(笑)
国王陛下、どこに行っても注目の的です。威厳も隠せないだろうし、本人慣れちゃってて演説とかもへっちゃらですし。下手したら校長先生より態度偉そうなんじゃ・・・とも思います。
きっと未汝はその度にハラハラしてるんだろうなぁ(笑)
名無さん、素敵なパパりん、ありがとうございました!!
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