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名無 様作 【コラボ作品】 ヴァンパイア凪咲
コラボ作品【St.Evilnight Saga ~血華繚乱~より】
誕生日プレゼントにと、ヴァンパイア凪咲のイラストを、名無様が描いて下さいました!!https://estar.jp/novels/25496701/viewer?page=74
名無 様 https://estar.jp/users/159246105
【St.Evilnight Saga ~ 真珠星の心 ~】
何となく、お散歩したい気分だわ。
深夜。そんな気持ちになって外へ出た私は、昼間の喧騒がなくなった静かな街中を歩く。
夜風が心地良い。
雲一つない夜空には星が綺麗に瞬いて、とても心が落ち着いた。
広場のベンチに座って星空を眺めていると、柄の悪い男達が下卑た顔をして私に近づいてくる。
―― 面倒なのに見つかったわね……。
別に倒せないことはない。相手は人間で、私は魔物。いくら女だと言っても、その力は人間とは桁違いなのだから。
折角の気分が台無しだわと思って立ち上がると、一瞬だけ男達の方が動きが早かった。
ニヤニヤとして私を取り囲む男達。
か弱い女を取り囲んで集団で襲おうだなんて、なんて卑劣で野蛮なのかしら。恋人が欲しいなら、ちゃんと自分の口で口説くべきなのに。
ほんと、最低な輩だわ。
そう心の中で思いながら、自分も口説きもせずにポラード神父を抱きしめて殺し、その首筋に噛みついて魔物にしてしまったことを思い出す。
私は別に、集団で襲ったわけじゃないわ。そもそも、私の心臓に杭を打ち込むなんて非道なことをしたから、その仕返しをしたに過ぎないのよ。ただ殺してエサにするには勿体なかったから、噛みついて魔物として蘇らせてあげただけ。
丁度、下僕も欲しかったし。
―― 愛してしまったし……。
今のはナシ。あれは下僕。私は仕返しして慈悲でもって噛みついてあげたの。殺すには惜しいかな? なんてちょっとした出来心だったの。
そんな言い訳を無理にしていると、何だか自分が情けなくなってくる。
愛してしまったのだと素直に認めた方が色々楽なのに、それが出来ない。
私の腕を、一人の男が掴んだ。
下心を隠しもしない目を向けて、私の全身を舐めるように見るから、背筋がぞわっとする。
先に手を出してきたのはあちらだもの。手加減、しなくていいわよね?
ついでに私の今日のエサになってもらおうかしら……? こんなの生かしておいても社会で悪さしかしないだろうし。たまには社会貢献してあげてもいいわよね。
でもこんな野蛮な男、私の下僕にはしたくないから、きちんと殺してから噛みつかずに啜ってやらないと。
そんなことを考えていると、別の男が私の背後に回って、肩に手を置いた。
傍の木に止まっている私の可愛い子達が、一斉に飛び立とうと羽を広げたその時。
「何をしてるんだ」
自警団のタスキをかけた男性の一人が、声を上げた。
バタバタと逃げ出していく男達を、自警団の数名が追いかけて行く。
「こんな夜中に女性が一人で出歩いたら危ない目に遭うことくらい、想像できただろう」
来なさいと言われて、私は面倒なことになったわね。と息を吐いてついていく。逃げることも出来たけれど、こういう小さな村では隠れる事は出来ないから、渋々大人しくついていった。
「夜中に一人、あんな広場で何を?」
自警団の待機所につくと、尋問のように色々訊いてくる。
いちいち答えるのは面倒ね。どうにか早く解放される手立ては……?
私の脳裏に、ピンと閃くものがあった。
今の私は不埒な輩に襲われたか弱い乙女に見えているはずなのだ。だとするならば、それ相応の態度を見せれば早く解放してもらえるのではないだろうか?
いいことを思いついたとばかりに、私は胸元で組んだ手を口元に当てて、少し震えて見せる。
「その、星があまりに綺麗だったので、つい……」
声も震わせて、先程の出来事に怯えている娘を演じる。
「だからと言って、こんな夜更けに一人でいたら、ああいう輩に目を付けられることくらい予想できただろうに」
「ごめんなさい」
思ってもいない謝罪を口にして、上目遣いで自警団の男を見上げた。
あら。思ったよりも美味しそうな人。健康そうだし、適度に運動しているのか身体も引き締まっているし……。
さっきご馳走を逃してしまったし、この人なら勤勉そうだから下僕にしても……?
「ご家族は? どこに住んでる? 家まで送ろう……」
別にこのまま解放してくれれば、一人でも帰れるわと思っていると、ガラリと戸を開けてポラード神父が入って来た。
「高杜さん」
何で下僕が……?
驚いて目をぱちくりすると、ポラード神父は自警団の男に目を向ける。
「ポラード神父、どうなさったんです? この女性とお知り合いで?」
「外が騒がしいので出てみれば、自警団の方が人を探してみえたので話を聞いて……。高杜さんは教会の信徒で、ご家族を亡くされたと最近越してこられたんですよ」
「ご家族を……それであまり見かけない顔だと……」
そう言って、自警団の男は憐憫の目を私に向ける。
―― ああ、やっぱりこの人美味しそうだわ。下僕にしてあげましょう。
怯えたふりをしながら、組んだ手の下で舌なめずりをする。
「傷心の彼女です。私一人この世に残ってもと自害を仄めかすこともあって、心配してはいたのです。こんな深夜に一人で徘徊して、不埒な男達に襲われかけるなんて怖い思いまで……。今日は私が高杜さんを教会でお預かりしますので、このまま引き上げさせて頂いても?」
真面目な神父の顔をした下僕は何故か、私の企みを見抜いたように邪魔をする発言をした。
「ポラード神父が預かって下さるなら安心です。またフラフラと出歩かれて危ない目に遭わないとも限りませんし」
自警団の男は迷子の子供を見るような慈愛に満ちた目を私に向ける。
ここでポラード神父に引き取られては、この美味しそうなエサを逃してしまう。
「そんなご心配なさらなくても、私なら大丈夫ですわ。本当に星を眺めたかっただけですから。もう少ししたら落ち着くと思うので、神父様にこの身をお預かり頂かなくても」
だからさっさと帰りなさい下僕。飲みたければあとでこの人の血を分けてあげるから。
目でそう訴えるも、下僕は素知らぬ顔をして私の肩に手を置く。
「こんなに震えて……怖かったでしょう。強がることはありません。腰が抜けて立てないようなら、僭越ながら私が抱いて運びますよ。貴女がここに居ては、彼も仕事が出来ませんし」
震えてないことも怯えてないことも百も承知のはずなのに。
ポラード神父はそう言って、ひょいっと私を横抱きに抱きあげる。
「ちょっ……神父様、下ろして」
「遠慮なさらずに。別に重くありませんよ」
「重……」
「懺悔したければいくらでもお付き合いします」
「懺悔……!?」
ニッコリ笑ってそう言う下僕に、私は二の句が継げなくなる。
「それでは、高杜さんは確かに私がお預かりしました。お仕事お疲れ様です」
自警団の男にそう言って、ポラード神父は私を抱えたまま待機所を後にする。
「ちょっと下僕、何で邪魔するのよ」
「貴女が、彼の血を狙っているのが分かったからですよ」
「美味しそうだったじゃない。下僕が増えれば、貴方の仕事も減るのよ?」
「ロクデナシしたいのは山々ですが、あの人はいけません」
「何でよ」
「この間子供が生まれたばかりなんですから。ご家族を不幸に落とすのは、心が痛みます」
そう言って、私の足をそっと地面に下ろす。
「それで? 人間の男に囲まれたくらいで怯える貴女じゃないでしょう? 殴り飛ばすのも逃げるのも朝飯前でしょうに……そんなに血に飢えているなら、差し上げますよ?」
「別に、そう言うんじゃないわよ」
「……ほんとに怯えてたんですか? 」
まさか、有り得ないでしょうと言わんばかりの目を向けるポラード神父に、私はちょっと腹が立った。
「殴り飛ばそうとしたところを自警団に見つかって、人間らしくしていただけよ」
ぷいっと子供のようにそっぽを向くと、ポラード神父が肩を竦めたのが分かった。
「自警団の方が口にする特徴がどうも貴女に似ている気がしたので、様子を見に行ったんですよ。何かあってからでは遅いと思って」
どうせ私が何か問題を起こすとでも思ってたんでしょ? と口を尖らせると、ポラード神父はそのまま話を続けた。
「……貴女も一応は女性ですから、人数に囲まれれば負けることもあります。慢心するのも良くないので、気を付けて下さい」
心配するような言葉に思わずポラード神父へ目を向けると、彼は立ち止まって私に目を向ける。
「げぼ……」
「それにしても、貴女を襲おうとした男達、自警団に追われて命拾いしましたね」
「命拾い……」
―― 心配してくれたわけじゃないのか、この下僕は。
何だか無性に腹が立って、ヒールで下僕の足を思いっきり踏んづけてやる。
「いっ……」
「帰りましょ。か弱い乙女が夜中に歩くと危ないそうだから」
「誰がか弱い乙女……」
「何か言ったかしら?」
「いえ、何でも」
―― 全く、一言多いんだから。
そうは思っても、どことなく心は弾んでいる。
迎えに来てくれたということは、ちょっとは心配してくれたのかしらという淡い期待を胸に抱いて、満天の星の下をヒールの音を響かせながら帰路についた。
高杜観覧感想文:
誕生日のお祝いにと頂いたイラストが、こんな乙女で清純なヴァンパイア凪咲!! 素敵ステキっっ!!
乙女ですよ。清純ですよ。あのヴァンパイア凪咲が!!
高飛車がなりを潜めてか弱そうじゃないですかっっ←ぇ
これで世の男共はイチコロさ←(おいっ)
でも、何を祈っているんだろう???
う~ん。と考えた結果。
「ポラードさんに、真面目な(ふりをしている)神父を描いたので、高杜さんには、乙女の(猫を被ってる)ヴァンパイアを描きましたw」(名無様の落書き帳より抜粋)
のお言葉を見て、方向性を決めました。
最初、実は有毒魚ばかり食べさせられた神父様、とうとう倒れたんじゃ……(看病中?)とも思っていましたが、真面目な(フリをしてる)神父様のSSの方向性と足並み揃えようとした次第です。
題名の真珠星は、おとめ座の星で「おとめ座アルファ」とも呼ばれます。「スピカ(Spica)」はギリシャ語で「尖ったもの」という意味があり、素直じゃない彼女のツンデレ具合も掛けていたり……?
それにしても、神父様に翻弄されてますね。頑張れ、V凪咲(笑)
名無さん、清純乙女なヴァンパイア凪咲を、ありがとうございました!!
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コラボ作品【St.Evilnight Saga ~血華繚乱~】
※本編は、ポラードさんのところで公開しております。
作品リスト「コラボ作品関連紹介」https://estar.jp/collections/2248187からお飛びください。豪華スター特典もございます。
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