静繧 憂 様作 宮木架名(新姓:鈴香)

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静繧 憂 様作 宮木架名(新姓:鈴香)

誕生日プレゼントにと、静繧(せいうん) (ゆう) 様が描いて下さいました!!a3fc4bc5-de88-4ed9-a595-79d83f4bfbffhttps://estar.jp/pictures/25614173 静繧(せいうん) (ゆう) 様 https://estar.jp/users/78004379 テーマ「貴方に忠誠(ちゅうせい)(ちか)おう」 シーントーク:(出演:架名・未沙・文花)  未沙の専属ボディガードとして就任(しゅうにん)する際、架名は一度未沙に忠誠(ちゅうせい)(ちか)っている。  ただそれは、きちんとした儀式(ぎしき)()たものではない。  いつも架名が息抜きをしに行く丘で、立つ未沙の傍で(ひざ)を折り、口上を述べたに過ぎないのだ。  だが、未沙が第一王女として正式な後継者となった今、きちんと儀式を行おうという話が出た。  騎士(きし)という身分はこの国にはないが、形だけはそのような叙任(じょにん)式を()り行おうと。まぁ、いわゆるパフォーマンスである。  普段は着ることのない軍服に身を包んだ架名は、はあぁと礼拝堂の扉の前で溜息をついた。リハーサルは問題なく終えたが、何となく気が重い。  いつもは未沙の傍に控えている立場だが、今日は違う。マスコミの目は、未沙だけでなく自分にも(そそ)がれるのだ。いや、むしろ今日は自分が半分主役である。出来ることなら目立ちたくない。ひっそり生きていたいのに、その希望は何故か(かな)わない。 「架名様、リハーサル通りに」  礼拝堂の扉を開ける役目を()った衛兵(えいへい)が、そう(はげ)ましの声をかけてきた。  架名はそれに軽く微笑んで扉の前に立ち、真っ直ぐに前を見据(みす)える。  合図のアナウンスが入って、目の前の扉が左右に開かれた。  祭壇へと続く道を正面を見据(みす)えたまま歩いて行き、祭壇の置かれた壇上へと登壇(とうだん)した。  祭壇で待っていた神官の晋槻(しんつき)文花(ふみか)が、祭壇に置かれた銀の剣に手の平を(かざ)して祝別(しゅくべつ)を与える。 「聖なる月の守りを持ちて、魔を払い困難に立ち向かう勇気をこの者の心に(とど)め、その光がなお一層の輝きを放たんことを。また(いや)しと(さきわ)いを与え(たま)え」  そうして祈りを捧げると、銀の剣を両手で取り上げ架名に手渡す。  架名はそれを両手で受け取ると軽く一礼し、そのまま二歩下がってから回れ右をして壇上から降りると、再び祭壇へと向き直り、腰に銀の剣を()く。  文花はそれを見届けると祭壇を後にし、今度は未沙が祭壇の前へとやってきて架名に向き直った。  未沙が立ち位置に立ったのを確認して、架名は腰に()いた剣を抜くと、手の平を返すようにして刀身を水平に(たも)ち、柄を左手で受けるように持たせると、刀身を下から支えるように右手を()わせる。その場で(うやうや)しく差し出すようにしてその場に(ひざまず)いた。  未沙は差し出された剣の柄を右手で握ると、目の前で(ひざまず)く架名の左肩に剣の刃を置く。 「汝、国家の為、王家の為、裏切ることなく(あざむ)くことなく、常に己の品位を高め、民を守る盾となり、時に(あるじ)と共に戦う勇気ある剣となることを希求(ききゅう)します」 「我、この身は国家の為、この精神は主の為、謙虚(けんきょ)に誠実に礼節を持って、弱者に優しく強者に(ひる)むことなく、我が命尽き果てるまで、鈴香未沙王女に忠誠を(ちか)うとここに誓約(せいやく)申し上げます」  誓文を互いに交わすと、未沙は架名の首の付け根辺りを軽く二度剣で叩く。そして架名の胸元に切っ先を向けた。架名はその切っ先を右手で受けると、刀身に軽く口付ける。  それを見届けた未沙は、剣を横にして水平に持ち、架名に差し出した。  架名はそれを(うやうや)しく受け取ってから柄を握って立ち上がり、切っ先を天へと向けて胸の前で構える。 「宮木架名。先程の忠誠、確かに受け取りました。今後とも職務に(はげ)み、その力を皆の為、存分に役立てて下さい」 「国の未来と(あるじ)行路(こうろ)を守る為、この銀が(くも)らぬように、未沙王女が希求(ききゅう)する平和と皆幸(かいこう)への道を共に歩み、誠心誠意お仕え致します」  未沙が微笑んで一つ(うなず)くと、架名もまた小さく微笑んで、構えていた剣を腰に()いた(さや)へと(おさ)める。  金属の合わさる甲高(かんだか)い音が一つ礼拝堂に響くと、堂内に拍手が()いた。  ―― 無事に終わった。  あとは未沙を連れて礼拝堂から出れば終わりだ。  架名は3歩進み出ると、壇上から下りる未沙に向けて手を差し出す。未沙はその手を取って壇を降りると、架名に手を預けたまま、扉に向かって真っすぐに歩いていく。  だが、何となくその歩き方に違和感がある。どことなく、足を(かば)っているような気がした。  礼拝堂を出て扉が閉まるのを見届けてから、架名はホッとして深く息をつく。 「姫、お疲れ様です」 「架名もお疲れ様。それでね、ちょっとお願いがあるのだけれど」  恥ずかしそうに切り出す未沙に、架名は先程の違和感を口にする。 「足、どうかされましたか?」  聞けば、未沙が驚いた顔をして目を見開いた。 「靴擦(くつず)れしちゃったみたいで……」  足が痛くて。と消え入るような声で言う未沙に、架名は目を瞬いて苦笑する。  ―― そうか、だから歩き方に違和感が……。 「やっぱりヒールが高かったんですね。何となくそんな気はしてたんです」  「失礼します」と言って未沙を横抱きに抱き上げると、マスコミが礼拝堂から出て来る前に未沙の自室へ引き上げる。 「架名、そんな、その辺の部屋で私待ってるから、靴を……」 「その間の護衛、どうするんです? 今日は皆持ち場があるので、予定変更するの大変なんですよ。マスコミに見つかりさえしなければ、問題ないでしょう?」 「それは、そうだけど……」  子供みたいで恥ずかしいわと思いながら、架名の首に抱き着いて顔を伏せる。  そんな未沙の行動に、架名は可愛らしいなぁと思いながら、階段を軽い足取りで上って行くのだった。 高杜観覧感想文:  本編にありそうでなかった忠誠を誓うシーンです。  いやぁ、これを書く日が来るとは……(笑)  誕生日のお祝いにと頂いた、「貴方に忠誠を誓おう」がテーマの素敵イラストです。  軍服架名、素敵ステキっっ!! カッコイイっっ!!  そして白薔薇が良く似合ってるのは、さすが架名だなぁと思いました(笑)  勲章、凄く細かく描かれているんです。調べて描いて、大変だったろうなぁ……と、拝んでおります。  そして剣にはめ込まれた宝石は、私の誕生石であるアクアマリンの色です。  ホワイトデーを意識して、白薔薇と共に送って頂いた憂さんからの愛が凄いっっ!!  ついでに銀の剣で私を貫く程の愛です。あ、マドンナリリーの代わりでもあったりするのかな? 白薔薇???  憂さ~ん!! 愛してるよ~~♡  え? 私宛の愛じゃない??? 誰宛? そんな野暮なこと聞くんじゃない???  そんなご無体な。憂さんのちょっぴり意地悪なところもステキです。  そして架名は絶対に私に忠誠は誓っていない。相手は勿論……ですよね。  憂さん、軍服で誓う架名を、ありがとうございました!!
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