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静繧 憂 様作 宮木りな
りなのイラストを、静繧 憂 様に描いて頂きました。https://estar.jp/pictures/25714951
静繧 憂 様 https://estar.jp/users/78004379
シーントーク:(出演:りな・架名・未沙・未汝・牧)
架名「りな~。そろそろ邸外公務に出発する時間だけど、準備できたか? って……何してるんだ、そんな書類持って」
りなの自室を訪れたところ、分厚い会計ファイルが山と積まれた部屋の中に、書類片手に立っている弟を架名は見つけた。
りな「使途不明の会計書類を見つけたので、ちょっと調べてたんですよ。もう終わりますから」
そんなことを言いながら、りなの手は分厚いファイルに綴じられた書類を繰っていて、目は凄い速さでそこに書かれた内容を読み下していた。
架名「……お前、昨日の晩も同じこと言ってなかったか?」
りな「ええ、見つけたのは昨日の昼間ですので」
架名「今日は邸外公務に行く姫達のボディガードの仕事だろ? ちゃんと寝ないと駄目じゃないか。そんな寝不足な顔をして」
りな「寝ようとは思っていましたが、気が付いたら朝日が昇っていたので……。大丈夫です。兄さんと違って、僕はまだ若いので」
架名「……いや、俺と歳、2つしか違わないだろ、お前」
りな「2つも兄さんの方が歳を余分に重ねているわけです。なのに中身はその2年分の成長を全く感じませんが」
架名「やっぱり寝不足だろ。(毒舌健在だけど、いつものキレがない)」
未汝「りなちゃん、架名ちゃんも。もうそろそろ出発するよ? って……りなちゃん、まさか徹夜したんじゃないよね? その不機嫌な顔……」
架名「未汝姫、すみません。そのまさかのようなので、りなを今日のボディガードから外します。誰か別の人間を手配してきますので……」
りな「大丈夫ですよ、兄さん。支障はありません」
相変わらず、資料から顔も上げずに答えるりなに、架名は呆れた顔をした。
架名「お前が自分でそう思ってても、周りはそうは思わないんだぞ?」
未汝「そうだよりなちゃん、今、自分がどんな顔してるのか鏡で見て来てよ」
りな「心配して頂くのは有難いですが……二人揃って、ちょっとうるさいので静かにしていて下さいませんか? もう少しで何か分かりそうなのに……」
資料を繰っている手が、ピタリと止まった。
そして、りなの口元が不敵に微笑む。
整った、どちらかと言えば母親似の綺麗な顔立ちのりなが微笑めば、それは美しいのだろうがしかし、悪魔が獲物を見つけたかのような邪悪な笑みにしか、架名にも未汝の目にも見えない。
りな「やはり、ここでしたか。以前にチェックした時、何となく違和感を感じたんですよね。あの時チェックした内容では、間違いなどありませんでしたが……」
架名「……楽しそうだな、りな」
りな「ええ、楽しいですよ。埋蔵金を見つけたのですから。ついでに、湯水のごとく税収を使おうとする首相の首も斬れますから、心が躍りますよね」
未汝「心が躍る内容が、おかしい気がするの、私だけ……?」
架名「いえ、未汝姫が正常だと思いますよ。こらりな。お前やっぱり寝てないから色々狂ってるんだろ。良いから寝ろ。今日の仕事、全部キャンセルでいいから。頼むからこれ以上、恨み買うような仕事の仕方をしてくれるな」
未汝「そうだよりなちゃん。休んだ方がいいよ。精神衛生面がだいぶ心配だよ?」
りな「恨みを買わなきゃいいんですね? では、今回は正攻法で行きましょう」
架名「いや、そう言う問題じゃなくて」
牧「何だ、そろそろ出かける時間だろ? 昨日の見つけたのか? りな」
扉を開けはなして会話をしていたせいか、やってきた牧が顔を出す。
りな「はい。首相の首を斬れる内容ですよ」
牧「ほぉ? それは、大物を釣り上げたな」
牧とりなの真っ黒な笑みを見た架名と未汝は、背筋をゾっとさせてそのやりとりを見た。
牧は国王陛下だから、そういう政治の黒い部分を闊歩していても不思議はないのだが……いやむしろ、この御仁は自分の庭のように黒い部分を、水を得た魚のように暗躍してそうだが、りなまでそこに足を踏み入れているのか。
まだ10代だというのに、色々遠い目をしたくなってくる。
未沙「架名、未汝。りなを呼んでくるって言って、戻ってこないから……どうかしたの?」
架名「姫。いえ、りなが寝不足なので、今日の仕事は休みにさせようと思っていたんですが……」
未沙「やっぱり徹夜したのね。でもその顔なら、原因究明出来ただけじゃなくて、何かお土産まで見つけたのかしら?」
りな「ええ、首相の首と埋蔵金が」
未沙「大漁ね。りながご機嫌なわけだわ」
架名「……いや、姫。よくこいつの機嫌なんて分かりますね」
未沙「分かるわよ。何年一緒に暮らしてると思ってるの? でもりな、今日は外のお仕事はやめた方が良いと思うわ。折角見つけたのなら、先にその資料を作って整えたいでしょうし、ボディガードの仕事は誰か他の人に頼むから、今日はそちらの仕事を優先して?」
りな「分かりました」
未沙「さ、架名、未汝、行くわよ。父様、りな、行ってきます」
牧「ああ、行っておいで」
りな「お気をつけて」
そうして、邸外公務へ出かける未沙達を見送ったりなは、傍に立つ牧に目を向ける。
りな「未沙姫に、上手いこと休まされてしまいました」
牧「架名だけでなく、りなも未沙には敵わないのか。まぁ、実際酷い顔色をしているから、りな、今日はちゃんと休め。何なら睡眠薬を処方してもらってこよう」
りな「大丈夫ですよ。薬なんてなくても寝られます」
牧「そうか? まぁ、今日はゆっくり休むんだな。あの子達が帰って来るまでに、その目の下のクマ、取っておいた方が良いぞ」
りな「……分かりました」
その日の夕方。
未汝「ちょっとりなちゃん、ちゃんと休んだんじゃないの!?」
りな「あぁいえ、資料を作っていたら終わらなくて。でも、芋づる式に周りの大臣達も何人か処分できそうですよ」
架名「おいおいりな、休ませた意味がないだろ?」
りな「未沙姫は、資料を作って整える時間を下さったはずですが?」
未沙「……そうね。私、確かにそう言ったわ。でも、少しくらい休んで欲しいって思いもあったのだけれど……。しょうがないわね」
未沙は、2錠の薬と水の入ったコップを用意してりなの前に置いた。
そして、ニッコリと微笑む。
未沙「ちゃんと言わないといけなかったわね。りな、休みなさい」
りな「いえ、あともう少し……」
未沙「膝枕がいる? 他の人が良ければ、誰か女官さんに頼んでくるわ」
しれっとりなの苦手なものを盛り込む辺り、未沙も腹黒い。当然りなは、考える間もなく拒否した。
りな「いえ、遠慮します。お言葉に甘えて休みますので……」
言外に部屋から出て行って欲しいと伝えるも、未沙は微動だにしなかった。
未沙「そう言って仕事を続けるのは目に見えてるわ。りな、その薬飲んで」
強力な睡眠薬だ。薬に慣れた、架名やりなにも良く効く睡眠薬。
りなはしぶしぶ薬に手を伸ばすと、それを用意された水で飲み込んだ。
未沙「架名、りなが眠ったのを確認してから戻ってきて。未汝、部屋に戻りましょ」
未汝「え?あ、うん」
二人の姫が部屋から出て行くのを見送ると、りなが溜息を吐いた。
りな「未沙姫には敵いませんね」
架名「あの観察眼は凄いよなぁ。さすが王族の姫」
りな「……この睡眠薬、いつ用意したんです?」
架名「帰って来てから先生のところに行ってないから、多分、出かける前に処方してもらったんだろうと思うぞ。お前の気が済むまでやらせようと、様子見たんだろ。で、今のお前の顔を見るに、限界が近そうだから出したんだ。とりあえず寝ろ。姫が睡眠薬を出してくる程度には、疲れた顔をしているんだから」
りな「言われなくても、もう限界です。兄さん、あと、上着片付けておいてもらっていいですか?」
ボディガードの仕事をしに行くために着ていた白い軍服の上着を脱いで兄に放ると、りなはベッドに入った。すぐに、静かな規則正しい寝息が聞こえてくる。
架名「いつもながら、強情なりなを寝かしつける未沙姫の手腕って、見事だよなぁ」
架名はクスリと笑うと、りなに放って渡された上着をハンガーにかけてクローゼットへ片付け、電気を消して部屋を後にするのだった。
高杜観覧感想文:
りなの誕生日祝いに、等身りなのイラストを頂いちゃいました。
(筆者、言葉で祝っただけ←)
いやぁ、投下されて笑う笑う。もう馬鹿にされてるとしか思えない視線が、りなそのもので。
しかも、軍服着てるんですよ。勲章見ると、龍がいたりするんです。細部が凝ってるんですよ。そんで凛々しいのなんのって……、あぁ、よく笑った。(笑う所じゃないはずなのに)
というわけで、遅くなってすみません。
折角誕生月に間に合わせてもらったのに、私の回収が遅く……。
(しかも、色んな黒を使って絶対描くの大変だったろうに)
憂さん、腹黒りなちゃんの結晶イラスト、ありがとうございました!!
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