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わたし以外の食器達
棚に飾られてじっと静かに佇んでいる
寝静まった夜に一匹のネズミが迷い込んだ
明日の朝食の支度をされた食材の上を歩いて…
可愛らしいと愛でられることはない
彼らは病気を連れてくる
起きた時には、食材も何もかもが捨てられていた
「ラビ。この子は馴染んできている?ラビのことだから大丈夫だと思うけれど」
「シルは物覚え早いし、もう声も出せるんだ」
「そう。ーーおいで」
あの人に手招きをされて椅子の脇に立つ
食事の手を止めて、わたしの頭をゆっくりと撫でる手は硬かった
下げていた顔を上げるとにこりと微笑む顔が見えた
「楽しい?シル」
「……。…ん」
「なら、僕が君をここに連れてきた意味があったんだね」
とても…とても嬉しそうにしていた
「僕のことはヴィンスと呼んで」
(こくり)
あの人…ヴィンス様はその後色々な話をしてくれました
どうしてわたしたちのような物達をあつめているのか
なんでこんな森の中の屋敷に住んでいるのか
たくさん、たくさん聞きました
もう皆は知っているんだって
みんなも同じようにヴィンス様の屋敷へ連れてきてもらったから
今みたいにお話を聞いて
そしてわたしの前にも、いくつもの物が居て、旅立って行ったって
「仕方ない。僕たち魔法使いは皆貪欲なんだ……欲しいものを欲しいだけ、やりたい事に手を出して。あとは考えずに」
「……?」
「ああ、いや。僕は昔から君達のような魂の宿る物を集めるのが楽しいんだ。そしてどこかで輝くことが」
「ヴィンス様は趣味だと言い張りますが、私達はその心で助かっているのです」
「おかえり、フランチス。様子はどうだった?」
「苦しそうな寝顔はしていませんでしたよ」
「それは当たり前。だってまだ痛みを知らないから。
そうだね、もしかしたらテディはこのまま感覚を知ることはないのかもしれない」
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