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白い小さなシャツを着て
茶色の短い半ズボンを履いて
ふわふわとした白い体と垂れている耳
赤い目も、とても美しく作り込まれていた
金髪の少女の腕の中に収まっている姿で、古ぼけた写真に写っていた
「あお」
「そう、これは青。こっちが赤」
「あか」
「なんだ言えるじゃん。その調子で言葉に慣れていけば良いよ。ゆっくりでいいから」
「うん」
新しく屋敷に来たのはおれよりも若い少女だった
今まではおれが一番新しくって、ちょっとだけ、むっとしたけれど
お兄さん風っていうんだっけ?
シルに名前をあげて、ひとつひとつ教えて行くのがとても楽しい
だって何でも覚えが早い
今までどんな場所にいたのかは聞かないよ
おれだってよくわからない
聞かないけど、シルはきっといいところにいたんだろうなって思うんだ
そんなに嫉妬はしていないよ
おれだって、普通のところだったけれどいい人ばかりだった
ただちょっと、子供が正直すぎて、大人が甘やかし過ぎるだけだ
「それが終わったらテディの様子、見に行こうよ」
「(こくり)」
「あー、一番傷が深いのはわかってるけど…おれも早く外に出たいな」
「…外」
「そっちじゃないって」
シルが指をさしたのは窓の外に広がる庭と森だった
でもおれが行きたいのはそこじゃ無い
おれが元いた、あの世界だった
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