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朔の月には完全な闇が街を包む
その1歩手前の夕暮時
昼間の暖かい陽気は光の下を歩く人を照らしていたというのに
ひとつ、ふたつと黒い影が見えるのみだった
そんな町へとせわしなく出入りをするのは何台もの馬車
荷物を積んだ馬車が馬に引かれて街の中を通ってゆく
メインストリートの建物は全て、そんな馬車を受け入れるためにできていて
大きな貸倉庫といびつに歪んだ建物が並んでいた
商人達の目当ての物はこの世にはない、摩訶不思議な薬品や道具の数々
道に沿うように布を敷いて、がらくたとしか思えない物や草、木の実
それどころか拾ってきたと思われる石や木の枝、数々の料理、装飾品
何もかもを混ぜ込んだような市場は太陽が沈み月の無い夜にだけ開かれる
招かれるのは、魔を持つ人々
月が隠れる時にだけ別の世界と繋がる街を人は、明けない街と呼んでいた
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