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露天の境目にある魔灯火が灯りをつける頃
何も無い場所からいくつもの足跡が薄らとふり積もった灰に後をつけていく
徐々にあらわになる姿は、人の姿もあれば異形を背負う者も
空には翼を持つ何かがうろついていた
声は荒げない
露天の商人達も呼びかけをせずにじっと息をひそめ、目の前を歩く姿を眺めていた
談笑の声、笑みを浮かべた白塗りの面
姿形も奇妙ならば、言葉がわかるかすら怪しい
爪の長い赤の悪魔が指差したのは何の変哲もない羊皮紙
値段を聞くこともせず指を刺すだけの悪魔に、商人はくるりと羊皮紙を植物をより合わせて作った紐で括って渡した
そして与えられたのはお金ではなく、粉の入った小さな瓶
牙を見せ笑った悪魔を見送って、商人は交換した粉の瓶をいそいそとしまい込んだ
使ってみなければわからない
説明書も何もないそれはしかし、確実にこの世には無いものであった
この場にいるのは商人だけではない
重傷を負った兵士、死の病を持ついたいけな少女…人の手ではどうにもすることが出来ない運命
魔を持つ者たちの目に留まり、癒せることを…望みをかけて蹲っていた
自分たちではどうすることもできないことを成し遂げようと、自らの命を天秤にかけるものも
街の片隅では首に鎖がまかれた人が立っている
また一人、姿を現わす
人の姿をした彼は露天を覗き込んではまた別の場所へと渡り歩いていた
魔灯火の光を淡く反射する薄紫の髪は長く揺れている
立ち止まって、見下ろす陰は暗闇の中でも目の光を残して
探し物は何処へやら
今日も成果は無しかと落胆を見せた顔は一つの露天で止まる
他と同じようによくわからないものが置かれている中、黒ずんだ一つの食器を手に取った
そっと持ち上げ、微笑む
「店主、これを貰うよ」
お金など欠片の価値もなさない
懐に入っていた不透明な銀色の栞を置いて立ち去った
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