アルトドランの明けない夜

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暗闇から光の中へ 月のない夜を越えてヴィンスが降り立ったのは白い石畳が続く花の庭園 奥に見える屋敷を囲むように森が その中に、埋め尽くすように様々な種類の草や花が咲き乱れていた 辺りを見渡していたヴィンスの元へ一人の男が近寄る 仕立てのいい燕尾服 小さなじょうろを片手に持ちながら戻ってきた自分の主人を出迎えた 「おかえりなさいませ、ヴィンス様」 「…ただいま、ニケロ。今からみんなを集められる?そうだね…場所は食堂にしようか」 「かしこまりました」 ニケロと呼ばれた彼はお辞儀の後、風に溶けて消えていく ヴィンスはそれを笑って見届けて、手の中にある黒ずんだ食器をそっと足元に置いた 「ここなら君を傷つける人はいないよ。それとも、まだ怖い?」 優しく問いかける しゃがみこんで、両のてのひらを上に向けるとそっと、小さな手が乗せられた 今まで一人しかいなかったのに 黒ずんだ食器が置かれた場所にはいつの間にか、少女が一人立っていた 「それが君の姿、なんだね」 「……」 「まだ話せないのか…。日が浅い、体を得たのも初めてのようだし、まずは自分のことから知るといいよ」 膝を抱えて抱き上げ歩き出した わずかに見える足や腕、手、顔… そのどれもに黒いあざのようなものが浮き上がっていた じっと見つめる目は、言葉よりも心を語る 小さな手はヴィンスの服を弱くも、しっかりと握っていたのでした
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