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少女は記憶が曖昧だった
自分の意識が生まれたのがどうしてなのかはわからない
でも事実
自我と呼べるものは確かにあったのだった
「おれのことはラビって呼んでよ。君は……とりあえずシルでいっか」
(ふるふる)
「ははっ気に入ってくれたようで何より。シルは綺麗な銀の髪をしているから。銀ってsilverっていうんだろ?
……あれ、なんでおれそんなこと知ってるんだっけ。まあいいや」
名前と聞いて、わたしはすぐに首を縦に振りました
ずっとみんなと同じ名前で呼ばれていたから…名前をもらったら、わたしを見てもらえるの?
シル…素敵な名前
わたしの目の前に来た男の子は、わたしの手を取ると歩き始めました
まだ歩き慣れていなくて、絨毯の端で転んでしまったけれど
聞きたいことはたくさんあった
でもわたしは声の出し方を知らないの
うさぎの耳はずっと垂れているの?
ラビもわたしと一緒なの?
どうして、あの人はわたしをここへ連れてきたの?
わたし、もう使えないのに
「ここが厨房、ご飯を作るところ。それであそこの扉の中は食材置き場になってるよ。
でもあんまりいじらないほうがいいかも。ここはフランチスの場所だから」
(…?)
「誰だかわからない?えーっと、そう!シルと似たような格好をした女の人だよ。ヴィンス様につかる?つかえてる?んだって」
ラビのお話を聞きながら歩き回る
屋敷を全て見終えたら今度は外だとばかりに重そうな扉を開けてくれた
あの人に連れて来られたときはまだいっぱいいっぱいで…周りなんてどうでも良かったけれど
初めて見たたくさんの木と花に、ラビに促されるまでわたしは目をうばわれてしまったのでした
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