彼女の思惑

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最初は自宅から少しずつ。慣れてきたころは外出もしてみた。 そして最近は彼の職場、そしてスーパー。 気づかれないくらいに、少しずつ、少しずつ浸食していく私。それに彼が気づくか気づかないかはどちらでも構わない。 もう手遅れなのだから。 『彼の中の私が大きくなってきている』 今の彼は「眠気」と称しているみたいだけれど、それもいつまで続くか……。 そんな彼は今日、お休みを利用して病院に行っている。 連日続く眠気、記憶の欠如が気になり病院へ行くという選択肢を取ったようだ。私にも「最近身体の調子がおかしいのが気になるので、病院に行ってくる」と申告してきた。 私に申告してくるということは、その原因にイコールで私が結び付けられていないということがわかる。 『気を付けてね。何かあったら、私に隠さずきちんと話すんだよ?』 「うん……。いや、俺風邪もあまりひかない健康男児だから大丈夫だと思うんだけどな! 念のためな」 『その念のため、大事だよ。いってらっしゃい』 「おう、行ってきます……」 明るく元気な彼も、少し参っているようだ。 これで病院に行き、検査をしても何も原因は出てこない。出てこないからこそ、厭なことを考えるループにはまり込み、うつ状態になってくるだろう。 そう、彼の気力がなくなればなくなるほど、私が付け入るスキが大きくなるのだ。 あと少し、もう少し……
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