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『洗濯物の量によって、洗剤の量もかわってくるのよ』
「今まではランドリーで洗濯物突っ込むだけで乾燥まで自動だったからなー」
『もう! これからは容器についてる量をちゃんと確認するんだからね』
さて、掃除を強要された……教えてもらった日からはや一週間。
せっかくのお休みに、俺は彼女から今度は洗濯物のやり方を1から10まで教えてもらっている。
新しく買った洗濯機…というより、今まで洗濯機がなかったので、ようやく買った洗濯機だ。洗濯機の説明書を見ながら頭を抱えていた俺だが、奥さんは己の勘で使い方を覚えるタイプだ。
脱衣所に設置されたキレイなバスタオルが上にどかっと置かれた洗濯機。
これを見た彼女は『棚も買わないと……』と呟いている。
聞こえないふりをしてバスタオルをどかした俺は、まず洗濯物を洗濯機の中にぶち込む。
『あっ、こら、ばか』
「えっ……なぜにばか」
いわく、靴下は風呂場でもみ洗いをしたあとに洗濯機へ。
色のついた洋服は、白いものと一緒に洗うと色移りしてしまうため、一緒には洗わないとのことだ。
ああ、どうりで……俺の白いワイシャツ、いつの間にかきれいな水色になってたわけだ。
「いや、これはこれでキレイだし、普通に汚れているわけじゃないから着れるかなぁって……」
『ははーん、青いTシャツと白いワイシャツを一緒に洗ったと』
「白いワイシャツおろしたばかりなのに、そういえば見かけないなーと」
『ばかー!』
そういいながら、彼女は俺をポコポコと殴り掛かるが、全然痛くない。
今から徹底的に調教してやるという彼女の視線のほうが、全身に刺さって痛い。
さて、洗濯だが最初のすすぎはお風呂から残り湯を入れるそうだ。そのほうが水道代の節約になるとか。
これがまた重労働で、俺はヒィヒィ言いながら小さな風呂桶を使って何度も何度も残り湯を風呂から隣の脱衣所にある洗濯機へジャバジャバと入れていく。
見かねた奥さんは
『世の中にはね、便利なものがあるのよ』
と言って、専用のポンプが家電量販店で売っていることを教えてくれた。
最初からそれを教えてくれていれば、絶対に購入していたのに……と愚痴を言うと、少しくらい苦労をしたほうが良いだろうと言われる。
ちょっと意地悪な彼女だが、そこもそこでいい。
残り湯を入れ終えたら、次に洗剤だ。
俺が洗剤を片手に、どの程度の量を入れればよいのかを奥さんに教えてもらう。いわく、洗剤と柔軟剤は入れるタイミングが違うとか……。
「そんなこと、一度も考えたことなかったなぁ……」
『もう、これからは覚えてよね! で、洗剤はここ、ここに書いてあるとおりに入れて。商品によっても違うから、この洗剤はこれだけ入れればいいけれど、商品が変わったら量もかわるんだからね……覚えておいてよ』
「はっはーん、俺にそんなことができると? もうこの洗剤しか買わない」
『と、思いました』
出会って間もないのに、俺のことを大分理解してきた彼女はあきれた顔で、でも少し笑っていた。
かわいいな……。
おいおい、改めて「べた惚れだな」とか言わないでくれ。
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