1人が本棚に入れています
本棚に追加
家事というのは掃除だけではない。
世の中の女性は、これをフルタイムで働きながら旦那ないし彼氏の分までこなしているというのだから、頭が上がらない。
これに子育ても入ってくるとなると、なおさら……。
『現実逃避してないで、この一回も使った形跡がないキッチンを使って、料理するよ』
「失礼な。洗い物はするぞ」
『洗い物は料理でもなんでもありませんし、シンクしか使わないでしょ』
そう、俺は料理もしない。
掃除は必要最低限こなしていたが、料理となると別だ。
実家暮らしのときは、親がすべてやってくれていたので包丁など小中学校の家庭科でしか触ったことがない。
彼女曰く、料理は
『クック〇ッドさえ見れば、今は何でも作れるわよ』
とのことらしい。
俺にはいかんせん「適量」だったり「少々」だったりの概念が分からない。
少々は人によって量が変わってくるのではないか?
適量? それが分からないからレシピを見ているんだ。
「俺にはまだハードルが高い。お前に手取り足取り教えてもらおうかな」
『やだ、ちょっとエロい目してる!』
エロい目をしている?
上等だ、自分の部屋にいる女性をそういった目でみない男がいたら教えてくれ。
話がそれたが、さて料理をしようものならやれ調味料だボウルだなんだと必要なものが多い。うちには、まず包丁とまな板がない。しょうゆも、弁当の付属でついているものしかない。
おおさじこさじなんのことか……。
『はー……』
さて、この彼女のため息は何度目だろうか。
明日は日曜日、買い出しに出かけることとなった。
デジャビュ……そう、掃除用具を買い出しに行くときに似ている。彼女は俺の分かるかわからないかの単語をつらつら言い始めた。
メモ……メモをせねば……いくらか彼女に調教された俺は、メモをしろと言われる前からメモを取るようになった。
ふっ……
『成長している……とか思ってないよね? 成長じゃなくて、それが正常なの』
「おっ、うまい」
『おい』
「す、すみません」
最初のコメントを投稿しよう!