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彼女との生活を続けていると…
最近、彼女の性格が俺に近づいてきている。
夫婦というのは、一緒にいると性格や行動が似てくるというが、
それと同じ現象だろうか。
例えば味覚。
俺はどちらかというと味濃いめのしょうゆ味が好きだった。
ラーメンはしょうゆかとんこつ。
焼き鳥は塩ではなくタレ派。
そのほか、とにかく何でもしょうゆをかける癖がある。
唐揚げなんて、しょうゆとショウガで下味をつけているにもかかわらず、出来上がった唐揚げにまたしょうゆをかけるような人間だ。
それが、彼女と暮らし始めて少しすると「まぁ、塩もいいかな」と思うようになった。
『やだ、またそんなにしょうゆ……これは塩コショウで味ついてるんだから、やめなさい! 料理への!』
「えー、いやさぁ、これはクセだから。かんべん~」
『買ってきたお惣菜だって、作っている人がいるの!
きちんと一日の塩分量とか、カロリーとか考えて作られてるんだから』
「へいへい」
『料理するようになったらその考え、ぜーーーったい変わるから!!』
「へいへい」
とか、そんなやり取りをしていた気もする。
確かに料理を彼女から習い、調味料の幅も広がった。
「しょうゆ」と「塩」の二択しかなかった俺の知識は、今やオリーブオイルやゆず胡椒なんてものもお手の物? だ!
今日も今日とて仕事のない土日に、平日分のストック料理をする俺。
いやぁ、変わったなぁ……。
俺の隣で俺の包丁さばきを覗き見ている彼女には、感謝だ。
『へぇ、ようやく調味料の良さがわかるようになってきたんだね。
私の味覚に近づいてきてる……』
「いやぁ、これだとあれだな、三食カップ麺時代には戻れないなー」
『当たり前! 私の食生活なんだと思ってるの!?』
ん? 私の食生活?
「俺の食生活だろ?」
『え? 私そう言わなかった?』
「あれ?」
『あ、そろそろいいんじゃない? 鍋』
俺の聞き違いだろうか?
耳元で発せられた彼女の声、聞き間違えるということはないと思うが、
煮えたぎっている鍋を注意された俺は、そのことをその場ですぐに忘れてしまった。
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