ヴァイオリンのシミ

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ヴァイオリンのシミ

大阪の随分北の田舎で育ったYさん。両親は若く、その当時まだ26歳。Yさんと弟は7歳と4歳だったと言う。 「両親がハタチやそこらで結婚していて、経済的にはかなり苦しかったと思います。あそこも、築36年超えの年季の入った団地でしたから。」 その団地群の10棟の402号室がYさんの家だった。 8年ほど住んだ場所だが、奇怪な現象が多発する家で、後になって祖母に聞いたところ、お祓いまで呼んだこともあるらしい。 Yさんは幼く、記憶が曖昧だが大人達はかなり 参っていたようだ。 Yさんが覚えている限りで、402号室で起こったことは以下の通りである。 水屋に置いていた食パンの袋が1mほど飛んで落ちる。靴箱の上に置いていた籐籠の鍵入れがひっくり返りもせず、そのまま真下に移動している。廊下の鏡に小さな影が映る。 母がベッドで寝ていると、壁側に凄まじい勢いで吸い込まれていく。寝ている父の両足が浮き、足首を掴まれているかのように左右に振られる。 大きなものから小さなものまで、異様な現象の枚挙に暇がない家であった。
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