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 これからどうしたらいいんだろう。急激に現実的な問題が頭に浮かび始めた。人に見られたらどうしよう。もしも、千田のことが誰かに知られてしまったら、一体どうなってしまうのか。最悪の結末を想像する。もう二度とあんな想いはしたくない。 「巡は寂しくなかっただろうか」  思ってもみなかった千田の言葉に、自分の耳を疑う。 「どうして、そんな」  言いながら、自分の唇が震えているのがわかる。 「僕は千田に謝らなきゃいけないこと、たくさんあるのに…」  我が儘ばっかり言ったこと。千田を信じなかったこと。二人の約束を忘れようとしたこと。数え出したらきりがない。 「私は、この星に降り立ったときより人の真似が上手くなった。巡がそう信じてしまうくらい」  平坦なその声が、何故だか弾んで聞こえる。 「もっと上手になったら、巡は嬉しい?」 「そんなの、わかんないよ…」  千田は僕を喜ばせるとか、そんなことの為に地球に来たわけじゃないはずだろう。どうしてそんなに優しくしてくれるんだ。どうして、僕の孤独を埋めようとしてくれる。  僕だけを正しいと信じている千田が可哀そうに思えて仕方なかった。幼い顔がこちらを覗き込む。この姿こそが千田の内面を表しているようだった。彼は疑うことを少しも知らない純粋な子供に似ている。 「大丈夫。私は巡を一人にしない」  喉の奥がぐっと痛むのがわかった。優しい言葉に返事ができない。 「何度もそう約束した。それも、忘れてしまった?」  僕は今までに何度、傍にいてほしいと彼に頼んだのだろう。  小さい体を両腕で包み込んで抱きしめる。心細い夜のことを思い出していた。僕はずっとこうやって千田と一緒にいたのだ。千田が内側からずっと僕を抱きしめてくれていた。もう二度と手離してはいけない。 「千田、ごめん、ごめんね…」  幼い少年に泣いて縋り付く僕の姿はさぞかし情けないだろう。それでも千田は小さな腕で応える。僕が子供の頃にも、きっと同じことをしてくれていた。ぐずぐずと泣く僕に寄り添って、宇宙人は何を思うのだろう。自分の孤独と重ねてみたりするのかな。気の遠くなるような宇宙の孤独を想像した。 「…明日、ポップコーン作ってあげるよ」  言えば、腕の中で彼が顔を上げた。表情の無い瞳の中には、期待がはっきりと見て取れる。千田のことだから、フライパンで弾けるところを見たら一目で気に入るだろう。  週末になったら二人であの高台に行こう。それから嘘みたいな千田の話を聞いて、彼の好きな映画を観て、手を繋いで帰ろう。大切なことを忘れてしまわないように。長い眠りから目覚めた少年は朝陽に目を細める。おはよう、僕の優しい夢。今はそれだけでいい。
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