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プロローグ
俺は若頭なんて呼ばれている。
そう、ヤクザのような仕事になってしまったのには、俺の祖父の代からである。もともとはこのシマ一帯の保育園や幼稚園、介護施設などの運営に携わる普通の会社を経営していた。いや、いまもしている。
しかし、ここらのシマは昔からヤクザの根付きが強く、抗争になることも少なくなかった。
そこで、普通の会社ではナメられると考えた俺の祖父は「抗争鎮圧課」なる一団を発足した。
目には目を、ヤクザにはヤクザを。そういう安直な考えだ。
「ヤクザといえば和風で趣のある庭のついた一軒家が一般的だろう」というこれまた安っぽい考えで、家は普通の建売だったはずなのにそこを売って広い土地を購入し、新たに一軒家を建てた。
俺の親父は、そんな祖父をたいそう尊敬していた。この話を、俺は子供の頃から親父に何度聞かされたことか。
頭の弱い奴にはならないと決めたのは、この親父と祖父を持ったからだと思う。
生まれてからすぐに未来が決まっていた俺。保育園は家の経営するところへ入園。小中高と普通に通い(高校は色々あったが、ここでは割愛しよう)、本当は大学にも通い勉学を身につけたかったが家の会社に就職。
最初は普通に会社員をしながら、社会の常識を身につけた。
ここまで親父と同じ、予想通りの道だ。
ここからは違う。
俺は会社員をしながら、勉強もやめなかった。まずは大学卒業の資格を取る。
そこから怒涛の資格取得だ。馬鹿だからといって舐められたくない。
弱いからといって舐められたくない。
資格を取った、勉強もして格闘技などにも余念がなく、身体を完璧に鍛え上げた。だからといって俺のその後の未来が変わるわけではなく、二十五になると同時に例の「抗争鎮圧課」の若頭となるのだった。
そんな俺に転機が訪れる。
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