プロローグ

1/1
前へ
/8ページ
次へ

プロローグ

俺は若頭(わかがしら)なんて呼ばれている。 そう、ヤクザのような仕事になってしまったのには、俺の祖父の代からである。もともとはこのシマ一帯の保育園や幼稚園、介護施設などの運営に(たずさ)わる普通の会社を経営していた。いや、いまもしている。 しかし、ここらのシマは昔からヤクザの根付きが強く、抗争(こうそう)になることも少なくなかった。 そこで、普通の会社ではナメられると考えた俺の祖父は「抗争鎮圧課(こうそうちんあつか)」なる一団を発足(ほっそく)した。 目には目を、ヤクザにはヤクザを。そういう安直(あんちょく)な考えだ。 「ヤクザといえば和風で(おもむき)のある庭のついた一軒家が一般的だろう」というこれまた安っぽい考えで、家は普通の建売だったはずなのにそこを売って広い土地を購入し、新たに一軒家を建てた。 俺の親父は、そんな祖父をたいそう尊敬(そんけい)していた。この話を、俺は子供の頃から親父に何度聞かされたことか。 頭の弱い奴にはならないと決めたのは、この親父と祖父を持ったからだと思う。 生まれてからすぐに未来が決まっていた俺。保育園は家の経営するところへ入園。小中高と普通に通い(高校は色々あったが、ここでは割愛(かつあい)しよう)、本当は大学にも通い勉学を身につけたかったが家の会社に就職。 最初は普通に会社員をしながら、社会の常識を身につけた。 ここまで親父と同じ、予想通りの道だ。 ここからは違う。 俺は会社員をしながら、勉強もやめなかった。まずは大学卒業の資格を取る。 そこから怒涛(どとう)の資格取得だ。馬鹿だからといって舐められたくない。 弱いからといって舐められたくない。 資格を取った、勉強もして格闘技などにも余念がなく、身体を完璧に(きた)え上げた。だからといって俺のその後の未来が変わるわけではなく、二十五になると同時に例の「抗争鎮圧課」の若頭となるのだった。 そんな俺に転機(てんき)が訪れる。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加