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向かい合う形にして、両肩を押さえて根本まで入れると、コウちゃんは射精してしまった。初めてで、突かれただけでイけるんだから、コウちゃんはたぶん才能ある。嬉しくなって、つい続けてガンガンに突く。きつくて柔らかくてあたたかくて、最高だった。
コウちゃんは泣いて喘ぎながら怯えた目で見上げてきて、嗜虐心を煽る。もっと虐めて欲しいという顔で見てくる。
“ユタ”には、そんな嗜好はないのだから、やめてほしいな。
「今頃後輩くんは、彼女とこうしてる頃かもね」
コウちゃんは涙が滲む瞳を見開いた。
ついさっき、車両の端っこで凭れあっていた後輩くんとコウちゃんの姿を思い出す。
後輩くんは電車を降りる前、目を閉じて一瞬眠っていたコウちゃんの頬にこっそりキスをしていた。唇を離して、眠っているコウちゃんの髪に顔を付けて、彼は少し赤い顔でため息を吐いた。
ここまで拒絶されたら、押しきって家まで送ることはできない。そもそもどうして男の先輩を、こんなに意地になって家まで送ろうとしているのか。いくら可愛いと思ったからって、眠っている隙にキスなんて、しているのか。迷って悩んで、どうしたらいいのかわからない。そんな顔で、彼は最寄り駅に着く少し前にコウちゃんを起こして、そして駅に着くと後ろ髪を引かれながらも降りていった。
後輩くんは、自分の気持ちに気づくのが遅かった。彼は間違いなく、コウちゃんに惹かれていた。だけれど、その気持ちは恋愛なのかわからない。わからないから、告白してきた適当な女と付き合ってる。彼女を好きになれたら、コウちゃんを諦められる。その方がマトモに生きられると踏んで電車を降りた。だが彼はおそらくコウちゃんのことが忘れられないだろう。
あのね。ノンケはいくら好きでも、同性の先輩にこっそりキスなんてしないから。
後輩くん、今日君がコウちゃんを家まで送っていたら、コウちゃんの初めては君のものかもしれなかったのにね。
お試しで付き合おうという、好きでもない彼女なんて放っておけば良かったのにね。
可愛い先輩コウちゃんは、後輩くんに彼女が出来たのが、死にたいくらいショックだって。自暴自棄になって、ほとんど行きずりの男とセックスしてる。
「あ、う、あっ、あっ……っく……ぅ、ん……っ」
足を開かせ、音がするほど腰を打ち付ける。コウちゃんは小さな獣のような可愛い声で鳴き続けた。
あまりの可愛らしさに、勢いのままコウちゃんの中で射精してしまう。
息を整えふと中心を見ると、後孔の痛みで少し緩んだのだろうコウちゃんのぺニスが目についた。優しく握って上下すると、コウちゃんは、いや、と首を振った。それなら、と潤んで虚空を見つめる瞳に、コウちゃんが一番欲しかっただろう言葉をあげる。
「幸崎先輩、愛してます」
「あっ……、だ……め……っ」
その効果は顕著で、ビク、と手の中のものが芯を持って膨らむ。
後ろは別の男のものを咥え込んだまま、想い人の妄想で前を硬くしているコウちゃんは、浅ましくも憐れで、とんでもなく可愛いかった。愛しさで、胸が絞られるようにつきりと痛む。この身体をやっと手に入れたという実感が湧き、指先まで痺れる程に気持ちが昂った。
「すぐに忘れさせてあげるからね」
キスの間際にそう囁いて、四年越しにようやく、ユタは愛しい迷い子を手中に収めた。
...and Yuta's story started.
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