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終電車がホームに滑り込んできて、降りてきた人が足早に改札を通り抜けていく。ベンチに座って手を握りあっている男二人に目をくれる人間など、駅員以外にいなかった。
「可愛い顔してそんな隙だらけでいると、悪い大人につけいられて、酷い目にあっちゃうよ?」
例えば俺みたいな。ユタは、にこり、と笑ってコウちゃんの頬に触れた。
酒に飲まれたコウちゃんは、どうでもよさそうに項垂れる。
「……べつに、いい……」
「なに?」
「ひどいめ、あいたい……から……」
コウちゃんは泣きながら笑っていた。俯いた瞳からポタポタ涙を落とすコウちゃんの肩を抱いて慰める。
「好きな人に彼女でもできちゃった?」
コウちゃんは黙って泣き続ける。沈黙は肯定に他ならない。
「コウちゃん、酷い目にあわせて忘れさせてあげようか?」
「……うん」
ちゃんと聞こえていたのかわからない。でもコウちゃんは簡単に頷いた。そんな目で見られると、Sっ気がなくてもやってあげたい気がしてくる。とはいえ、身体を痛めつけるのは趣味じゃない。手中におさめた可愛い男子大学生を、どう調理しようか思案しながらユタはコウちゃんを支えて立たせた。
*
駅から近い同性OKのラブホに誘った。受付で会計を済ませて部屋に入るまで、なんとなく無言で、コウちゃんは眠そうに俯いていた。ステンカラーコートを脱いでハンガーにかけながらコウちゃんを見ると、ボディバックの斜めがけのベルトを両手で握り、入り口で固まっていた。
「ほんとにいい? ……って、ここまで来て無しって言われても困るけど」
ボディバックを握り締めていた指を開かせて外し、コートを脱ぐのを手伝ってあげながら聞くと、恥ずかしそうに小さな顔がこくんと頷く。
「それじゃあ、しようか」
襟首から指を差し入れて、コウちゃんを裸にするのは実に簡単だった。
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