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幼児の真剣
昭子にとって叔母にあたる人が亡くなった。
はじめて子を持ったとき、親よりも可愛がって世話してくれた人だ。
葬儀には、その子供、早智も連れていった。まだ3歳だが、あとあとのことを考えて、可愛がってくれた人のお見送りには参列させてやることにした。
一通りの儀式が終わり、棺に花や折り鶴を一人一人納めていく様を、早智は黙ってじーっと見つめていた。幼心にも、なにか感じるものがあるらしい。
やがて自分の番が近づいてくると、早智は昭子をふり向いた。
「ねえ、おかあさん」
「なぁに?」
「ぞうさんの棺桶には、ハシゴはつくの?」
昭子は言った。
「そうね。最後のさよならは、ちゃんとお顔を見てしたいもんね」
早智はうなずき、手に持った花を叔母の手の上にのせて、叔母の顔を見た。
「ばいばい、おばちゃん。またね」
昭子はそっと目頭を押さえた。
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