4人が本棚に入れています
本棚に追加
/90ページ
まずは勉強?
明菜は受験に勝った。
浮かれてはいられない。
好きな勉強に打ち込むため、あらゆる誘惑から身を守る必要がある。
なのに、お姉ちゃんたら。
明菜は姉から進学祝いとしてプレゼントされた口紅を、手の中に眺めた。
ちょっとくらい、いいよね?
クルクルとひねると、初々しくて落ち着いたピンク系の口紅が出てきた。
「可愛い……」
しばらく見て楽しんだあと、やおら鏡に向かって身を乗り出し、唇に当てて引いた。
「───ぎょぎょ!?」
口紅は根元から折れた。
思えば、勉強ひとすじに生活してきた自分である。リップさえ、塗ったことがなかった。力加減なんて知らない。そもそも、どれくらい出して塗る物だったのか。
「お姉ちゃ~ん!」
明菜は幼児の頃のように、姉の部屋の戸を叩いた。
最初のコメントを投稿しよう!