父の教え

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 銃撃戦から二日後。充電していたスマホ、LINEがポップな音で私を眠りから覚醒させる。  胡乱気な瞳でアプリを起動。どうやらリーダーからのグループ通知らしい。 『今週の日曜日に試合を組みました』 ふむ、日曜日か。高校も休みだし好都合だ。 『フィールドは〝山〟です』  山、か。勾配がありそれでいて足場も決して良いとは言えず、スタミナのなさが嫌でも浮き彫りになるフィールドだ。先日の雑木林は障害物があれど比較的平らな地形だったため最後まで戦えたが、私は人に自慢できるような体力の持ち主ではない。並が関の山な私には少々しんどい。 『対戦相手は〝レッドマンバ〟です』  レッドマンバと言えば、サバゲーの公式大会に過去何度も参加しており、日本一の称号を獲得した経歴を持った強者揃いのチームだ。メンバー全員が赤い銃を所持しているのが特徴的で、蛇のように足音を立てずに獲物を仕留める戦法に定評があると雑誌で見かけた事があった。 『できれば明日までに参加の意思を示して頂きたい』  練習試合とはいえ、そんな強豪チームと対戦できるなんて願ったり叶ったりだ。断る理由はない。先方に取り次いでくれたリーダーには頭が上がらないというもの。  私は真っ先に出陣を告げた。それに鼓舞されたかのように、次いで既読が付いていく。客観的に見て、私が所属するチームは皆、良い意味で好戦的な性格をしている。その結果、全員が参加を申告し『ありがとう』というリーダーの言葉でグループトークを締めくくった。 「よぉし、目ぇ覚めました!」  私はのそのそと着替えを済ませ部屋を出ようとする際に、壁に吊るした迷彩服に目をやった。ところどころに修繕箇所や頑固な泥汚れが目立つが、それら一つ一つが経験値なのだと自然に目が細くなる。その時の感情たるや悪夢の余韻すらも容易に祓う。それ即ち、気持ちよく一日の始まりを迎えられるという事だ。  ささやかな高揚感を抱きつつ朝食のバターロールを胃腑に献上し、猫のように軽快な足取りで学校へ向かうのだった。
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