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楽屋劇場/ご相談先は慎重に
皆さんは既にご存じだろうか?
フサフサとした三角耳と尻尾とは対称的に、鋭い牙と夜目がきく狼人。「牙に問う」の主人公として出演しているロウウェル=グウェンのことを__。
此処は舞台裏と呼ばれる控え室。
監督<びたみん>の呼び出しを待ちながら、彼は個人的な悩みを抱えていた。
「バレンタイン、か」
予定は特にない。
でもそれは、彼が何もしなかったらの話だ。
忍ぶ癖から友達が少なく。小さい頃から好きな子が出来ても右往左往するだけの彼だが、今年は違う!
楽屋で「ヨシ!」と腹を決め、ロウウェルが向かった先は、テレビを見ながら寛いでいた監督の休憩室。
そこにデデンと座った人型の犬とは対照的に、(何事ですか?)とばかりに小さく震える猫なびたみん監督。
「相談がある」
「そ、相談?」
ロウウェルの人相からして、あれこれと考える猫__じゃない。びたみん監督。
とは言っても、彼の性格を知っている監督/びたみんが心配してることは全て的外れだったりするのだが……。
堂々と来た割には、監督(猫)に耳打ちをするロウウェル。
その話を聞いてニタリ顔になる監督/びたみんだが、彼の性格上絶対笑ってはいけない。なんせ彼が傷付けば、こんな面白話__ごほん、失礼。
こんな恋ばなは、直ぐにでも枯れてなくなってしまうことだろう。
しかし、だからと言って監督/びたみんに案があるわけではなく。面白く__いや、楽しく話を盛り上げてくれそうな人をロウウェルに紹介することにした。
「そう言うことは、亀の甲より年の功。有能な憂さんに相談すべきだよ」
「なるほど」
普通、監督と言われる原作者がのってあげないといけない話だと思うが__。まだ監督との付き合いも浅いロウウェルは、疑うことなく雄の楽屋にやってきた。
そう、彼の名前も<ユウ>なのである。
(ぜってぇ人違いだろ?)
そう思ってもロウウェル本人にい言えないのは、彼の監督/びたみんが言う<ユウ>が誰なのか知っているからだ。
しかも口許を隠して、人相の悪い目付きをしていながらも小さく尻尾を振ってみせるロウウェル。犬好きな雄は、素で可愛いと思うのであった。
【つづく】
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