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「で、突然どうしたの?」
「相談がある」
「そ、相談?」
ロウウェルの事は、監督繋がりで聞いてはいたが……。何故相談相手に<ユウ>か選ばれたのか、さっぱり理解出来ないでいる雄。
実は彼、<鳳龍 雄>は__
鳳龍伝説の主人公を担当している億歳の超人である。故に監督の<亀の甲より年の功>という言葉に当てはまるものの、恋愛経験不明の記憶障害者。はっきり言って人選ミスである。
おまけに人違いだと言って、雄の監督である<静繧 憂>に会わすと碌な事にならないので。ロウウェルの申し出を断れなかった雄は、彼を楽屋に招き入れると耳打ちで事情を聞いた。
「へぇ~。アレマちゃんって言えば、ロウさんと一緒に<牙に問う>に出てる女優さんだよね? その子にバレンタインを渡したいと」
すると、雄の復唱にちょっと辱しめいた様子で小さく頷くロウウェル。
明らかに本命のチョコを渡したいようだ。
「それは普段お茶する仲ってことかな?」
しかしロウウェルは、迷わず首を横に振ってみせた。
「え。じゃあ絶賛片思い中なの?」
嫌な予感がしたけど……。尋ねてみれば案の定強く頷いてみせるロウウェル。それは明らかに厄介な案件を意味していた。
「……えっと。それで本命のチョコを突然渡すのは、ちょっと無謀かと……」
「何故だ?」
「いや、何故って……」
普通考えたら想像出来る範囲だと思うのだが……。そこは人間の感覚とは違うのか? はたまた雄を試しているのか?
どちらにせよ、説明もなく否定するのは良くないと思った雄は、ロウウェルに伝わるよう例え話をする。
「じゃあ、もし好きな人でもない奴からチョコを貰ったらどうする?」
「噛む」
「いやいやいや! 怖くない! 怖くないから、ね!」
即答された瞬間、風の〇のナウシカに登場するテトの某シーンが過った雄だが、そんな可愛い結果にならない事は、言わずとも分かってもらいたい。
「とりあえず彼女には出来ない行為だよ」
すると真顔でクナイを出し、じゃあ俺が殺すとばかりのリアクションは止めて頂きたいものだ。
「とにかくバレンタインの前に親睦を深めないと……。アレマちゃんの好みが分からないんじゃないの?」
けどそこはさすが忍びというか、暗殺者というか。まぁ傭兵も情報が命だと思うが……。耳打ち情報に男性諸君にとっては、わぉvVなものも含まれていたのは、収録先(本編)では生活を共にしてるからだろう。
訳あって女性の知識がある雄は、咳払いついでに忠告してやる。
「それ、誰にも言うなよ」
しかし、そこまで知ってて告白どころか。親睦のシの字すら怪しいのは問題だ。
ひとまずバレンタインの前に、一度は茶に誘うようロウウェルに助言する雄なのであった。
【つづく】
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