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13話『思考放棄』
ステータスを確認した康煕は暫し考え、そして考えるのを放棄した。
「ね、どうだった?どんなスキルか教えてよ」
「んー、普通だな。スキルなんかは、ギルドで登録した時に調べるものだろ。それよりも、飯にしようぜ」
何か隠されたような気がする・・・
そんなモヤモヤとした気持ちが沸き上がったものの、とりあえずご飯を食べる準備に取り掛かった。
これから移動するなら、少しでもお腹に溜まる物を口にしなくてはならない。しかし、ここにあるのは味の濃い缶詰と甘い缶詰。そして、乾パンである。水もあるけど限りがあるため、貴重で多くは使えない。
そんなことを千隼なりに考えていると、目の前でありえない光景を目にした。
「な、・・・なにしてるの!?」
千隼が驚くのも無理はないだろう。自分の目の前でご飯を炊き始めたのだから・・・。
荷物チェックの中身に、お米や炊く為の道具が入っていなかった。だからこその驚きなのだ。
「何って、飯盒で米炊いてる。魚缶は、味が濃いだろ?旨味も凝縮して入ってるだろうが、単品で食すには塩分摂り過ぎで高血圧になる可能性が高い。だから、少しでも米と一緒に食べようかと思ったんだが嫌いか?」
いろいろと考えてくれる彼は、確かに正論を述べている。述べているのだが・・・
米を炊くということは、枯木や枯葉を使い火を使うということ。
そして、今いるとこは見渡すかぎりが草原。異世界あるあるでいうところの火を使うと火事になる恐れがあるということ。
で、慌てたのが千隼だった・・・
「康煕!ちょっ、ちょっと待って!!!?こんなとこで火なんか使ったら、山火事みたいになっちゃうよ!!!?」
千隼とは対照的に落ち着いてる彼は、笑いながら答えた。
「大丈夫だから落ち着いて?飯盒を使うにあたり、そのままでは火事を引き起こすことは知ってる。だから、使用するときは周囲を掘ってむき出しの土の上を利用する。そうすることで、火事は防げるだろ」
言ってることは解る。分かるけれども、その道具を取り出してる場所を見て千隼の驚きで固まるのだった。
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