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あれ以来、誰に何を言われても、俺の心に悲しみが広がる事はなくなった。
そして、中学校に上がった現在も、樹里は俺の事を大切な友達だと言ってくれている。
だけど、俺は同じように大切な友達だと言っているけれど、樹里と同じように真っ直ぐな気持ちで言えない自分に気がついてもいる。
……樹里の側にいると、そわそわして、何だか気持ちが落ち着かない。
その気持ちの正体には、とっくに気がついている。
"恋心" なんて、可愛い名前は到底つけられない程、歪んだ気持ち。
樹里が、みんなのものでも構わない。だけど、心だけは俺が守りたい。
理不尽でもいい。
筋が通っていなくても構わない。
俺の心を救ってくれた樹里のために、勝手に誓いを立てる。
もしこの先、樹里の心に悲しみが広がるような事があったとしたら、大好きな君の心だけは、絶対に守り抜く。
「だから、ずっと樹里の側にいるよ」
これは、君の知らない誓い。だけど、君だけに約束する俺の誓い。
いつか直接想いを伝えられるように。
俺はこの日から、心に小さな "独占欲" というモンスターを住まわせた。
〈end〉
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