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高校二年のころ、好きな女の子ができた。正確にはその子のことが好きだ、と自覚したのが高校二年の出来事だった。俺とその子は中学からの付き合いで、いつも話すグループの一人だった。好きになったのは何気ない放課後の教室で話しているような時だった。その子の話す声が微笑む顔が可愛くおもえてしかたなかった。ほんとはもっと前から好きだったのかもしれない。それでも、そのことに気づいたときからその子を思うと心臓の音が聞こえるくらいにドキドキと胸がなった。
高校の文化祭、中学の頃とは比べ物にならない規模で自由行動が許されている。俺はこの文化祭中に告白をしようと考えていた。そんな文化祭に沸き立つ一ヶ月前、転校生はやって来た。転校生は男で、転校慣れしているのか一週間もすればクラスに馴染んだ。入った部活が俺の好きな子と同じ演劇部もあって俺たちと一緒に行動することが増えた。文化祭まで一ヶ月を切っていたこともあって、学校のことについて彼女が教えて回っているのを見ていた。文化祭まで彼女も部活が忙しいようで、文化祭の前日まではこれまでのよう話す時間がなくなっていた。文化祭前日、俺は告白のために彼女に当日使用されない教室に来てくれるよう話す必要があった。
その日、俺は活動後の彼女に会いに向かっていた。演劇の練習を体育館でやっていることは聞いていたので、俺は体育館に続く階段を降りていた。そこには窓があって、降りてる最中その窓から体育館の様子がうかがえる。俺はその時の光景が目に焼き付いて離れないほどに鮮明に見えた。転校生と彼女が二人きりでどこかへ移動していくようだった。周りを気にして、まるで誰にも見られたくないような素振りだった。ただ、俺のことは向こうから見えなかったようでそのまま体育館裏へ向かっていった。俺はどことなく不安になってバレないよう、その二人の様子を見に行った。体育館裏、声は聞こえなかったけど、何かを伝える転校生、その後に頭を下げて手を伸ばす。彼女は嬉しそうに手をつないで、転校生は顔を上げた。二人は幸せそうな空間に包まれて喜びを分かち合うようにまた何か言葉を交わしていた。俺はその空間にはいなかった。
文化祭当日、転校生と彼女がクラスの出し物の担当から同じタイミングで抜けていった。他のクラスメイトは付き合ってるんじゃとか口々に噂をしていた。その答えを知っていた俺は二人が一緒に文化祭を回るために彼女の頼みで転校生と役割を代わって受付担当をしていた。一秒が一時間にも感じた。そのまま文化祭は後夜祭まで含めて知らないうちに終わっていた。
二人は幼馴染だったらしい。幼、小と同じで家族ぐるみの付き合いも多かったそうだ。その後、付き合ってることを堂々と打ち明けられた時に教えてもらった。両想いだったらしいのだけれど、転校生の転校がその時もあって離れ離れになってしまったのだそう。思いを告げぬまま会えなくなって、たまたまこの高校で再会を果たした。二人が言うには再会した時は「奇跡」だと思った、だそう。
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