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更衣室の天井
Aさんはアラサーで水商売歴12年のベテランだった。
その日は席で飲みすぎて、次の出番まで二畳もない更衣室の丸椅子で水コップ片手に休憩していたそうだ。
「インフルの病み上がりにショットがバンバン出てもう大変よ〜。立ったら吐きそうでさ。」
お金のためお金のためとアルコールに浸された頭で念仏を唱えていると、
頭上からパラパラ、、、と乾いた音がした。
「1か月前くらいに店にネズミが出たらしいのよ。あたしは見てないんだけど。駆除剤とかネズミが嫌う超音波?みたいなの出す機械とか置いてたから、あーそれかって。」
お店が入ってるビルの横は居酒屋と焼肉屋である。ネズミなんていつ出てもおかしくなかった。
「パラパラ、、、って砂が落ちる時みたいな音がして、その後にガサガサ、ガサガサって。うわー店に出たら最悪だなって思ってた。」
一度音は止んだが、5分もしない内にまた頭上で乾いた音がしだした。
「いよいよこれ出てくんじゃないのって、気持ち悪いし店長呼ぶかって思ってたらー。」
ドンッゴロゴロゴロ、、、と鈍い音がして、Aさんは中腰のまま硬直した。
明らかにネズミではない。もっと重いものが天井裏に落ちた。
同時に一瞬電気がチカッと揺れた気がして上を見上げたところ、
「耳元で『んふふっ』って。生まれて初めて腰を抜かして、這って更衣室を出たわ。」
アルコールなど吹き飛んだという。
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