2. オーダーメイドの頼み方

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「ここだけの話。若葉、めちゃくちゃ褒めていたよ。津久田くんのこと」  招待状を手に、友人の女性が言った。 「優しい。女遊びしない。家のことも率先してするわけじゃないけれど、できることはやってくれる。おかげで式の準備も、全然、辛くないって」 「そっか」  雅臣はレモン水が入ったグラスを傾けた。氷にぎこちない笑顔が映る。 「私も話を聞いてて、すっごく嬉しかった。ああ若葉って恋愛運いまいちだったけど、ちゃんと運命の出会いが、待ってたんだなーって」 「言いすぎだろ」 「ううん。私も――若葉が付き合ってきた四人の中で、津久田くんが最高だと思うよ!」 「え?」  雅臣は氷を鳴らした。  予想外の言葉に慌てる自分と、妙に冴えてくる自分がいた。  大丈夫。思いがそのまま顔に出たのは、ほんの一瞬だ。 「四人って……俺、若葉には『三人目の彼氏』って聞いていたんだけど?」  場の空気を乱すまいと、本心を悟られまいと、自然に明るい笑顔が浮かぶ。 「おい」雅臣の友人が、隣の友人を肘で押す。 「あ……今、彼氏に数えないひとも数えちゃった」  フォローのつもりだとしたら逆効果だ。彼氏に数えない男とは、一体どういう男なのか。 「なんかごめん」 「いいって。……ま、もてる彼女と結婚できて、幸せですよ」  いまいちな嘘だなと思いつつ、笑っておく。口角をあげて目を細めればそう見える。 「そうだよね」  もう少し取り繕ったほうがいいか。冷めた頭で考えていると、前菜が運ばれてきた。  雅臣はパスタランチを食べたが、味がよくわからなかった。    ◇◇◇  三人でも四人でも大差はない。そう思おうとしても、胸をくすぶられた。  夕方に合鍵を使い、若葉の住む賃貸の部屋に入る。壁を背に座り込む。  お喋り好きの友人が話していたことを、明かりもつけずに思い出す。携帯電話はリビングテーブルの上で、震えている。十コール目で切れる。  かかってくるタイミングで、彼女からだと察していた。無視した。  午後九時半に、若葉が仕事から帰ってきた。 「雅臣ただいま。もう、ちゃんと携帯出てよ」  リビングに明かりが灯る。 「夕飯まだなら、なにか作ろうか?」  若葉はリビングに来ると、床に置かれた雅臣のボディバッグを拾った。中からひらりと、一通の招待状が落ちる。 「招待状……誰に渡せなかったの?」 「若葉」  雅臣はフローリングの床を見ながら、問い詰めた。 「お前、何人と付き合ってきたの?」
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