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廊下の奥からスーッと和服姿の儚げな美しさのある女性がやって来た。足音はしない。申し訳なさそうに眉が下がっている。
『えっちゃん、ごめんなさいね。いつも、迷惑かけて。生実に後で謝りにこさせるから。』
「あー、靖乃さん気にしないで。生実がものを掴めるようになったの、私喜んでるのよ。前は、出会った頃、掴めなかったし、成長してるわよね? 」
『そう言ってくれる優しいえっちゃんが、この家に住んでくれて本当に嬉しいわ。ありがとう。』
「こちらこそ、お陰で破格の家賃でこの家に住めるんだもの。それに、一人暮らしの退屈が紛れるわ 」
『えっちゃんが来るまでの住人は、それはそれは、つまらなかったわ。無視を決め込んで全く反応なし、いきなり発狂するか、直ぐ気絶して引っ越して行ったもの 』
「それは、仕方がないかも。私も最初は気絶しそうな程ビックリしたんだから 」
そう、皆さんもお気づきのように、ここは曰く付きの訳あり物件である。
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