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フーッ。息白いねえ。寒いねえ。冬もちょうど真ん中だねえ……ちゃんと聞いてる? ……ならいいけどさあ。ねえねえ、髪切ったの、似合う? ……なーんか反応悪いなあ。どうしたの、具合悪い? そう?
でもこの気温だと風邪引いちゃいそうだよねえ。そ・こ・でえ……。じゃーん!! マフラー作って来ちゃいました! ちょっと長いかなあ。でも半分こにはちょうどいいね、えへへ。いつも青っぽい服着てるからさあ、灰色? 銀色? そういう青に合うっていう糸買ってきて作ったんだ。
何? 大事なお話があるの? ふうん。でも先にマフラーつけちゃうね。えーい! ……わあ、やっぱりこの色の組み合わせゆうくんに似合う。ネット検索って偉大だね、えへへ。
いったん黙ってって? わかった……。
……別れたい? そっかあ。驚かないんだねって? 気持ちが他の人に向いてるの、とっくにわかってたから。
意外だった? そうだねえ、わたしバカっぽいもんねえ。喋り方とかもポヤポヤしてるってよく友達に言われるよお。自分でもあんまり頭良くないと思うし。でもね、ゆうくんのことならわかった。
……なんで、ってそれ聞いちゃうんだ。好きだからだよ、ゆうくんのこと。大好きだから。知ってる? そうだよねえ、わたし頭悪そうでボケーっとしてるのに、重たい女だもんねえ。
ちょっとゆうくんが他の女の子や男の友達と仲良くしてただけで、毎回ヤキモチ妬いてたもんねえ。手編みのマフラーとかセーターとかも贈り物としては重いもんねえ。っていうか手作り自体が無理って風潮あるもんねえ。
そういうのも知ってる。でも止めらんなかった。ゆうくんのこと好きだから。
思いやりのない自分自分自分自分、自分を見てばかりの好きでも、好き。……そんな顔しないでよ。こういう性分だっていうの、自分でもわかってるから。
クルミちゃんと仲良くね。最期にマフラーだけちゃんとつけさせて。後で捨てていいから。
……なーんちゃって!
苦しい?マフラーでも結構首締まるんだねえ。わたしそんなに力強くないはずなんだけど、なんでこんなにうまいこと男の子のゆうくんの首絞められるんだろうねえ。やっぱり大好きな人の首と命締めてるから真剣にやらなきゃ! って火事場の馬鹿力が出てるのかなあ。
……ねえねえゆうくん。わたし確かに顏以外は重くて気持ち悪い女だったと思うんだけどさ。ゆうくんもゆうくんで、わたしの顔以外のこと見てくれてた? ヤキモチばっか妬くのうっとおしい女だったと思うけど。じゃあヤキモチ妬かないくらい大事にしようって、ちょっとでも思ってくれてた?
わたしが一番だよって、ウソでもその場しのぎでも言ってくれた? かわいい彼女がいるってアクセサリー以外の気持ち持ってた?
アハハ、酷い言い草だねえ。今ゆうくんの事好きって言ったくせにね。でもねえ、そういう気の利かなくてニブくて、天然なゆうくんのことが好きだったの。仲良くない子にはそのぶりっこみたいな喋り方気持ち悪いって言われるわたしの喋り方、「かわいいね」って素で言ってくれたゆうくんが好きだったの。
ママ譲りの可愛い顔だからそう思ってくれただけかもしれないけど。きっとあの時のゆうくんには打算なんてなかったよね。
……あっ泡噴いてる。泡噴いててもゆうくんってカッコイイね。おしっこも漏れてるけどちっちゃな男の子がおねしょしちゃったみたいでかわいいね。もう聞いてないかあ。残念だけど、これからはゆうくんが他の女のところや男友達のところに行くこともないもんね、嬉しい嬉しいっ。
……初めて会った時みたいな幸せな言葉、付き合った後一個でももらえてたら、きっと私少しは我慢できたと思うんだけど。まあしょうがないね、最初からわたし重かったもんね、きれいなアクセサリーが呪われた装備みたいな効果あったら、お祓いしてでも捨てたいもんね。
あっゆうくん倒れちゃった。まあもう死んじゃったから立てないよね……ちょっと隣に転がらせてもらうね。マフラーももう締めなくていいから借りちゃうね。えへへ、ゆうくんとマフラー半分こ! こういうの付き合ってから一度もなかったもんね。
地べただから背中冷たいけど、あったかいなあ。ゆうくんの身体段々冷めて来てるけど、わたしがくっついてれば温かくなるよねえ。まあ腐ってガイコツになったら流石に無理だけど、今だけはね。
ねえねえゆうくん。大大だーいすきだよ。
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