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しかしアサドは差し出した手を引っ込める事はなく、その無言の圧力に根負けしたナリアが持っていた箱をおずおずとアサドへと差し出した。
「申し訳ございません。アサド様に荷物を持っていただくなど。」
ナリアが恐縮しながら隣に立つアサドを見上げると、アサドは口元に軽く笑みを讃えてナリアを見つめ返した。
「たいした事ではない。どこへ運べば良い?」
「ヒンニィ様のお部屋へお願いします。昨日いただいた花を生けたくて。」
ナリアに言われて箱の中身が花瓶だと気が付いたアサドは、片手で持っていたものを両手で持ち直し、ゆっくりと歩き始めた。
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