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隣を並んで歩くアサドの事を、ナリアは気付かれない様にこっそりと見上げながらほんのりと頬を赤く染め上げる。
ナリアの視線にはまったく気が付く事もなく大事そうに花瓶の入った箱を抱えながらアサドはゆっくりと歩を進めている。
ナリアは高鳴る胸の鼓動を抑える様に、小さく深呼吸をした。
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元々ナリアはマリアゴルド国の西の山奥にあるケフィアの渓谷近くの州長の娘として産まれた。
羊や馬などの家畜と暮らし、家族で田畑を耕す生活を送りつつ、父は民に慕われながら州長として地域を治めていた。
ナリアも幼い時から美しく利発で聡明に育ち、その噂を聞いた侍女長が王女ヒンニィが産まれるのに合わせてナリアを侍女へと抜擢し、10歳になるのと同時にマリアゴルド城へと奉公に上がり始めた。
しかし、いくら聡明な少女とはいえ10歳で家族と離れ、慣れない環境で自身も教養を学びながら産まれたばかりの王女のお世話をするのは並大抵の事ではなかった。
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