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「大丈夫?泣いているのが見えたから。」
アサドに言われて、ナリアは騎士団の練習場を見ていたつもりが逆に自分も見られていたのだと気が付き、恥ずかしそうに俯いた。
ただ、ナリアが俯いてもアサドの手はナリアの頭をなで続け、その年齢のわりには大きく温かい手の感触は家族と過ごした時間を思い出させてとても心地の良いものであった。
「こうして頭を撫でていただいていると、遠く離れた兄を思い出し安心出来ます。」
ナリアが今の素直な気持ちを伝えると、アサドは安心した様に深緑色の切れ長の瞳を細めた。
「それは良かった。私にも同じ年頃の妹がいるから、よければ本当の兄の様に思ってもらって構わないから。」
そう言いながら微笑むアサドを見て、ナリアは辛さが安らいでいくような感覚に陥っていた。
ナリアは小さく頷くと、アサドの大きな手に身を委ね、その心地よさに浸り始めた。
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